散歩の百九十一話 北の辺境伯領に到着
そして子爵領を出発して五日後、僕達は遂に北の辺境伯領に到着しました。
「何だか、街の周りが山に囲まれているね」
「盆地だからだよ。盆地は、平地の周囲が山に囲まれているんだよ」
「「「そーなんだ」」」
峠を超えると、高台から北の辺境伯領の領都の様子がよく見えます。
盆地といっても結構な広さがあり、街が広く広がり川も流れていた。
よく見ると山裾に果樹園だと思われる所もあるので、とても豊かな地域だと一目で分かります。
そんな事を思っていたら、スーが僕達に話しかけてきました。
「実は、以前に北の辺境伯領を訪れた事があるんです。この時期は果物の収穫が行われていて、とても美味しい果物を頂きました」
「スーお姉ちゃん、どんな果物があるの?」
「ぶどうや桃やさくらんぼですね。ぶどうは、もう少し後で収穫されます」
「「「美味しそう! 食べたいな」」」
採れたての果物はとても美味しいよね。
もしかしたら、収穫を手伝う依頼もあるかも。
冒険者ギルドに行ったら、どんな依頼があるのか見てみよう。
そして馬車は防壁を通過して無事に馬車ターミナルに到着しました。
いつもだったら冒険者ギルドで到着の手続きをしてから宿を探すのだけど、折角なので先に北の辺境伯様の屋敷に向かう事になりました。
子爵様より預かり物もあるし、早めに渡した方が良いですよね。
そんな事を思いながら、僕達は街中を歩いていきます。
「あ、採れたての果物って看板が出ているよ」
「桃がある!」
「美味しそうだね」
目ざとくシロが果実を販売している所を見つけて、フランとホルンも一緒についていっています。
僕とスーも、桃に目がいっている三人の後を追います。
「おじちゃん、おばちゃん、桃ちょうだい!」
「あいよ。何個いる?」
「うーんとね、六個ちょうだい!」
「はいはい、ちょっと待っててね」
「少し試食してみるか?」
「「「ありがとー!」」」
シロがアオも含めて六個の桃を購入すると、お店のおじさんが桃を試食させてくれる事に。
「「「甘ーい! 美味しい!」」」
「はは、そうだろう。今年は天候も良くて、良い桃ができたんだぞ」
切り分けられた桃を食べると、シロ達は桃の美味しさに思わずにっこりです。
僕とスーとアオも試食用の桃を食べたけど、瑞々しくてとても美味しいです。
「おじちゃん、おばちゃん。果物ってまだまだ出るの?」
「でるぞ。今出ているのは早どりのやつだから、これからが本番だ」
「色々な種類の果物が出てくるのよ。とっても美味しいわよ」
「「「おおー!」」」
おじさんとおばさん曰くこれから収穫シーズンの本番を迎えるらしいので、シロ達もとても興味深そうです。
ついでという事で、他の果物も色々購入していきます。
その内に、アイテムボックスの中に果物がいっぱい入っていそうだなあ。