散歩の百七十二話 夜中の襲撃
そして、夜中になり辺りも静まり返っている時だった。
ちょんちょん。
ちょんちょん。
「うお、アオか。何かあったか?」
突然アオが僕の頬をツンツンして起こしたのだ。
一瞬、ホルンが夜泣きをしているかと思ったよ。
すると、アオは触手でドアの方をちょいちょいとさしていた。
パタパタパタ。
複数の足音が、廊下から聞こえてきた。
早速歓迎したくない奴らのおでましですか。
僕がムクリと体を起こすと、アオはちょうどスーを起こしている所だった。
「アオ、すまないが兵の所に行ってくれ」
僕はスーを起こしたアオにお願いすると、アオも頑張るといった感じで触手をふりふりしてから外に出ていった。
アオってすげーな、窓を一人で開けて出ていったぞ。
「ほらほら、誰かきたから起きてね」
「「むにゃむにゃ……」」
シロは何とか起きたけど、フランとホルンはスーが何をしても全く起きなかった。
こりゃ二人とも朝までコースか?
僕はそんな事も考えていた。
すると、廊下の方でも動きがあった様だぞ。
カチャカチャカチャ、カチャン。
おいおい、鍵を使ってドアを開けたぞ。
誰かが廊下の奴にマスターキーを貸したな。
ドン、ドン。
「くそ、ドアが開かないぞ」
「何かがつっかえているか?」
「あまり大きな音を出すな。起きるぞ」
「どうせ、睡眠薬のお陰で朝までぐっすりさ」
うん、ドアの前に机を持ってきて良かったぞ。
会話の内容から、コイツラは強盗で間違いないな。
睡眠薬の事まで知っているとなると、確実にカウンターにいた怪しい男と繋がりがありそうだ。
「「むう、うるさいよ……」」
そして、強盗が大きな音を立てたので、フランとホルンもむっくりと起き上がった。
無理やり起こされたので、二人とも超機嫌が悪いぞ。
ズルズルズル。
その間に、強盗は無理やりドアを開けて力任せに僕達が置いた机を動かしていた。
そして、ドアが人ひとり通れるくらいまで開いてしまったぞ。
「こんなもんを置いているとはな。しかも起きてやがるか」
「流石は冒険者様か、随分と警戒しているな」
「とはいえ、ガキを連れている。荒事は嫌だよな?」
「素直に有り金を置いていけば、痛い事はちょっとで済むぞ」
合計四人の強盗が、部屋の中に押しかけてきた。
強盗は僕達が起きている事に驚きつつも、子どもであるフランとホルンの姿を見て余裕で荒事を起こせると思ったらしい。
そして強盗は、スーを見てバカな事を言ってしまった。
「おお、そのねえちゃんは綺麗だな。胸は残念だけどな」
「そうだな。俺はもう少し胸が大きい方が好みだな」
「よく言うぞ。この巨乳好きが」
「男は誰もが巨乳好きさ。貧乳好きは少数派だぞ」
あーあ、普段スーはスタイルの事はあまり気にしていないけど、そこまで言ってしまうと流石に怒り心頭だぞ。
強盗は、スーから溢れんばかりの怒気にまだ気がついていない。
という事は、こいつらは見掛け倒しか。