散歩の百六十九話 怪しい服装の男
という事で、僕達は男爵領にある高級宿に到着しました。
「「「はあー」」」
「完全に場違いな程の高級感だなあ」
「そうですね……」
周りの建物から完全に浮いている、豪華な建物が目の前にどーんとそびえ立っています。
南の辺境伯領や東の辺境伯領でも見た事のないレベルの宿だぞ。
この時点で、皆一致して見るからにこの宿は怪しいと感じています。
「さて、何が出てくるかな」
「流石に入り口から変な物は出ないと思いますが」
意を決して、僕達は高級宿に入ります。
まるで森に入って魔物を倒す気分だぞ。
カランカラン。
「はい、いらっしゃいませ。五名ですか?」
「「「「「……」」」」」
宿に入ってカウンターにいた男性を見て、二度目のびっくりです。
如何にも詐欺師ですって言っているような、趣味の悪いスーツに豪華なメガネをかけています。
思わず、僕達全員が男を見て固まってしまいました。
「あの、お客様?」
「ああ、大人二人の子ども三人で部屋をお願いします」
「畏まりました。前金でお支払頂けますか?」
「はい、分かりました。こちらでお願いします」
「ニヤリ、ありがとうございます」
おっと、僕が宿泊代を前金で払うと、カウンターの男が思わずニヤリとしたぞ。
どう見ても、この男はかなり怪しいな。
スーもシロ達も、かなり怪しんでいるぞ。
「それではお部屋にご案内します」
「はい」
そして、カウンターにいた男が僕達を部屋に案内した。
いつもは元気よく返事をするシロ達も、今日は誰も返事をせず僕だけ挨拶を返しています。
「お部屋はこちらになります。夕食のご用意が出来ましたら、お呼びしますので」
「はい、分かりました」
そして、僕達はとても豪華な部屋に案内されました。
男がニコニコしながら部屋のドアを閉じるまで、僕とスーは愛想笑いを続けていました。
バタン。
トントントン。
「ふう、何だかとても疲れたよ」
「でも、まだ誰かに聞かれている可能性があるから、小さい声で話しましょうね」
「「「はーい」」」
足音が遠ざかってから、僕達は小さい声で話し始めます。
部屋の中には怪しい魔導具はなさそうだけど、気をつけないといけないぞ。
スーも、シロ達に向けてしーっと指を口に当てて静かにするように伝えていた。
「先ず、この宿自体が怪しいですね」
「そうですね。それに、宿の規模に対して従業員の数も少なすぎます」
「あの男から変な臭いがしたよ」
「悪者だよ、悪者!」
「怪しいです」
全員の意見が一致した瞬間だった。
シロ達が黙っているのも、この宿が怪しい証拠です。
あと、フランよ。
もう少し声を小さくしなさい。
「とりあえず、少し様子見をしよう。怪しいとハッキリと分かったら、兵の詰所に通報しようか」
「それが良いですね。先ずは様子見ですね」
という事で、かなり怪しい宿から何が出てくるのかな?




