散歩の百六十七話 強盗退治
夜中の内に雨は上がった様で、朝には日差しが出ていました。
道は少しぬかるんでいますが、馬車の通行には問題ないそうです。
この村からは、領都行きの別の馬車に乗り換えます。
カラカラカラ。
「あの、何だか馬車に積んである武器が多いような気がしますが」
「盗賊対策だよ。この辺りにも盗賊が出たことがあってな」
男爵領の領都行きの馬車には、剣やら槍やらと多くの武器が積まれていました。
どんだけ治安が悪いんだよと思いつつも、直ぐに僕達も身を持って理解する事になったのだ。
「うーん、ぬかるみにハマったか?」
「いいえ、どう見ても人の手で土を掘った跡があります」
馬車の車輪がぬかるみにハマってしまったので、全員馬車から降りました。
そして、スーの冷静な指摘通りにシャベルなどでわざと水溜りを掘った跡があった。
となると、この後の展開は何となく読めます。
「へへー、若い冒険者とガキか。痛い目に合いたくないなら、有り金、ぶべら!」
「とー!」
「「「お、お頭!」」」
茂みから如何にも盗賊ですって風貌の集団が現れたのだが、喋っていた男目掛けてシロとアオが飛び蹴りをくらわせました。
シロとアオの飛び蹴りをまともに食らった男は、路上にできた水たまりに突っ込んでいきます。
シロとアオも、せっかくだから男の名乗りを聞いてから行動しても良かったのでは?
「うわー、盗賊だ盗賊だ!」
「きゃー、きゃー!」
「「「ギャー!」」」
「ふ、フラン。ホルンも落ち着いて」
そして残りの盗賊も、盗賊の出現にびっくりしたフランとホルンの魔法乱射によって吹き飛びました。
スーは慌ててフランとホルンを止めるけど、魔法が止んだ時には盗賊全員が水たまりに突っ込んでいました。
「おお、兄ちゃん達は強いなあ」
「やったのは子ども達ですけどね」
僕は、御者と共に盗賊を縛り上げます。
盗賊は全員気絶していて更に泥まみれだったので、生活魔法で綺麗にしておきました。
その、盗賊が臭いのもあります。
というか、御者も盗賊を縛るのが上手いなあと思ったら、とある事を教えてくれました。
「俺は元々この領の兵士でな。兵を辞めた後に、馬車の御者を始めたんだよ」
「あ、だから盗賊を縛るのも上手なんですね」
「ははは、元々本職だからな」
笑いながら御者は話すけど、そりゃ縛るのは得意なはずだ。
僕が盗賊を鑑定したら賞金首だというのが分かったので、馬車の後部座席に縛った盗賊を乗せて再出発です。
カラカラカラ。
「こらー、俺達を下ろしやがれ!」
「「「そうだそうだ」」」
「うるさいなあ」
「アオちゃん、静かにさせて」
「「「ギャー!」」」
ギャーギャー騒ぐ盗賊にすっかり慣れてしまったフランとホルンは、アオに頼んで盗賊を静かにして貰うと思った様です。
アオも盗賊がうるさいのか、遠慮なく雷撃を食らわせます。
これで少しは盗賊も大人しくなるかと思ったらそうでもなかったので、盗賊は領都に着くまでにもう二発アオから雷撃を喰らう事になったのでした。




