散歩の百六十六話 雨中の旅路
東の辺境伯領内は特に問題なく進んでいましたが、これからは別の領地に入ります。
先ずは小さな男爵領なので、道中キチンと兵が警備しているか、とっても不安です。
「ここからは何があるか分からないから、皆も気を付けようね」
「「「はーい」」」
「くすくす」
僕が皆に声をかけると、シロとフランとホルンは元気よく手を上げています。
アオも触手を上げてアピールしているぞ。
そんなシロ達を見たスーは、思わずクスクスと笑っていました。
とはいえ本当に警戒しないとならないので、僕達は周囲の警戒をしながら馬車旅を続けます。
「「とー!」」
「「「ギャウン!」」」
通りにオオカミの群れが現れたので、シロとアオとフランが突撃して僕達は魔法で援護射撃します。
正直な所、このくらいなら全く問題ありません。
アオに倒したオオカミの血抜きをしてもらい、さっさとアイテムボックスに入れます。
そして、直ぐに出発します。
急いでいるのは、天候が怪しくなってきたのもあります。
ぽつ、ぽつ。
「あっ、雨が降ってきたよ」
「あちゃー、宿まで間に合わなかったか。皆、外套を着てね」
「「「はーい」」」
村の宿まであと三十分で着くという所で、とうとう雨が降り出してきました。
今はまだ小振りだけど念の為にと、東の辺境伯領で購入した外套を羽織って貰います。
フランとホルンは、購入した外套を見せ合いながらキャッキャしていました。
ザーザー。
ザーザー。
「何とか本降りになる前に着きましたな」
「ええ、良かったです」
そして、無事に今夜宿泊する村に到着です。
馬車も同じ宿に泊まるそうなので宿に着いた所、ザーザー振りの雨になりました。
本当に良いタイミングで宿に着いたなあ。
この村は男爵領としてはそこそこ大きい村で、宿もキチンとした建物でした。
「旅の兄ちゃん、良いタイミングだったね」
「本当ですよ。あと十分着くのが遅かったら、僕達はびしょ濡れになりました」
体格の良い宿のおかみさんも、僕達が宿に着いたタイミングが良いと言っていました。
「今日はシュンお兄ちゃんと寝る」
「じゃあ、フランはスーと寝る!」
「ホルンもスーお姉ちゃんと寝るの」
「あの、君たち、二段ベッドで寝てみない?」
「「「いや!」」」
「ハッハッハ、仲が良いことは良いことだよ」
そして、二段ベッドが二つある部屋を予約したのだが、ここでもシロ達は俺とスーと一緒に寝る事を譲らなかった。
宿のおかみさんも笑っていたけど、こればっかりはしょうがないのかな?
「どうも最近は領都で強盗が頻発しているらしいわね。御館様も対応に苦慮しているらしいよ」
「そうなんだー」
夕食を食べながら、おかみさんに男爵領の治安を聞くけど、やはりあまり良くない様だなあ。
身につける物は最小限にしたりするなど、自己防衛もやらないと。
「「ハグハグ」」
ナデナデ。
「「うん?」」
「何でもないよ」
特にフランとホルンはまだ小さいし、気にかけてやらないと。
僕は不思議そうに見上げてくる二人の頭を撫でながら、気を引き締めていました。