散歩の百五十話 地方にも司祭の問題が波及していた
僕達は村長の後をついて行くと、他の村人からも声をかけられます。
「おお、めんこい嬢ちゃんじゃのう」
「随分と若い冒険者じゃのう」
声をかけてくるのは中年以上の年齢の人で、本当に村には若い人がいません。
それ程、畑の害獣被害が深刻なのだろう。
「ここが儂の家じゃ。おーい、お客がきたぞ」
「はいはい、随分とかわいいお客様ね」
「「「「「こんにちは!」」」」」
村長さんの家に着くと、村長さんの奥さんが出迎えてくれました。
小さな応接室があるそうなので、そこに案内されます。
「どうぞ、お茶です」
「「「ありがとうございます」」」
奥さんがお茶を出してくれた所で、村長さんが話し始めました。
「元々この村には教会があり、教会付属の騎士団が若者と共に害獣の駆除にあたっておりました。しかし、数年前から急に害獣駆除の費用が高騰し、併せて騎士団もいなくなってしまいました。若者も害獣駆除費用を稼ぐために、領都に出稼ぎに行ったのです」
「シュンさん、これってもしかして」
「間違いない。あのアホ司祭のせいだぞ」
村長さんの話を聞いた僕とスーは、思わず顔を見合わせてしまった。
教会の問題が、地方まで波及していたとは。
もしかしたら、他の村でも教会の問題が起きているかもしれないぞ。
「村長さん、実は領都にある教会の司祭が中心となって大規模な不正をしていました。そして、先日王都よりやってきた聖騎士によって司祭は捕らえられました」
「私達はこのあと聖騎士より指名依頼を受けておりますので、この村の現状をお伝えします。聖騎士はとても良い人なので、きっと皆さんのお力になるはずです」
「おお、まさかそんな事が起きているとは。儂も書をしたためましょう」
村長さんにあの司祭の事を伝えたら、物凄くびっくりしていたよ。
本当にたまたまだけど、僕達がこの村に来て良かったよ。
もしかしたら、アオのスライム的勘で何かを感じ取って依頼書を選んだのかもしれないぞ。
「あと、皆様には申し訳ないのですが、空いている部屋がどの家にもありません。この村には宿もありませんので」
「ご心配ありがとうございます。僕達は冒険者なので、野営の準備もしております」
「庭先だけお借りできますか? 私達は食料も持ち込んでおりますので」
「どうぞどうぞ、お使い下さい」
一目見てのどかな農村だったから、宿がないのは折り込み済みです。
野営できる場所も確保出来たし、いよいよ行動開始です。