散歩の千百十九話 エミリア様も冒険者ギルドに到着です
僕はというと、虎獣人の治療に全力投球だった。
でも、何とかできる限りの治療を終えました。
「なんだか、体がしおしおになっちゃったね」
シロの言いたいことは、僕にもよく分かった。
劣化版魔獣化の薬を飲んだ虎獣人は、筋肉がごっそりと削げ落ちてしまったのだ。
今まで鍛えてきた肉体なのに、イチから鍛えなおしになりそうだ。
すると、この場に遅れてやって来た人が兵に指示を出しました。
「話を聞かないとならないので、軍の施設に運ぶように。枯れ果てた自分の体を見て絶望する可能性が高いから、常に監視を付けて」
「「「「「はっ」」」」」
エミリア様の指示を受け、兵は虎獣人を担架に乗せて運んでいった。
エミリア様も、ちょっとやるせない気持ちだった。
「安易に力を求めたのもあるけど、自分の体が激変するとショックを受けるものよ。私も足の怪我をして動けなくなった時に、結構ショックだったわ」
人神教の犯罪行為によって、こうして未来ある冒険者の将来が奪われるのは良くないと思った。
その間に、エミリア様は兵に状況を聞いていた。
「シュン、私も地下に向かうわ。お義父様の方は問題ないと思うのよ。シュンとシロは、暫く待機していてね」
「はーい!」
にこやかに手を振るエミリア様に、シロは元気よく手を挙げていた。
とはいえ、僕はこの後の展開が怖かった。
辺境伯様とギルドマスターに加えて、エミリア様まで尋問に参加するとは……
人神教の関係者は、生きて地上に上がれるのかとても心配になった。
この場にいる兵と冒険者も同じ気持ちだったのか、皆が黙ってエミリア様の向かった方向を見ていた。
ドカン、バキン!
「「「「「!?」」」」」
程なくして、壁を殴るような衝撃音が下から聞こえてきたのだ。
僕だけでなく、冒険者と兵は思わず顔を見合わせてしまった。
どうやら、人神教の関係者は怒らせてはいけない人を怒らせてしまったようだ。
三十分後、エミリア様が先に一階のフロアに戻ってきたのだけど、その、純白のオペラグローブとドレスに血がベッタリとついているんですけど……
「シュン、悪いけどポーションをあるだけもらえるかしら?」
「イエス、マム!」
僕は、直ぐにアイテムボックスからポーションを取り出した。
「ありがとうね。もう少し待っていてね」
「イエス、マム!」
十本のポーションを受け取りにこやかに指示したエミリア様に、僕は思わず敬礼してしまった。
この場にいる冒険者と兵も、エミリア様にビシッと敬礼していた。
シロだけはよく分からなそうな表情をしていたが、世の中には知らなくて良いこともあるんですよ。
そして、エミリア様は再び地下へと向かったのだ。




