散歩の千百一話 エミリア様との手合わせ
翌朝、僕たちは辺境伯家の庭に集まっています。
朝の訓練を行うんだけど、もちろんエミリア様の指導付きです。
うん、絶対に物凄く厳しいものになりそうです……
「そうそう、アオちゃんは一足先に町の巡回に行ってね。こういうことは、少しでも早い方がいいわ」
エミリア様の指示に、アオも頑張るぞと気合を入れていた。
既にうちの馬にも一連の話をしてあり、シロ曰く馬鹿は滅ぼすと言っていたという。
ゲス枢機卿一派には、馬も王都で散々嫌な思いをしたもんね。
「じゃあ、最初はみんなの強さを見るために軽く手合わせをしましょう」
「頑張れー!」
「「あうあう」」
エミリア様の説明に、前回辺境伯領で指導を受けた面々は思わず固まってしまった。
ケントちゃんとトリアさんと一緒にいる赤ちゃん二人は、謎の盛り上がりを見せています。
一方、初めてエミリア様と手合わせするヴィヴィやシャーリーさん、リアーナは何のことだかまだ分かっていません。
「そうね、最初はシュンと手合わせしましょうか」
エミリア様の笑顔が、一瞬悪魔の笑みに見えてしまった。
とはいえ、断ることなど不可能なので僕はとほほと思いながらエミリア様の前に向かった。
ザッ。
「ふふっ」
エミリア様、軽く手合わせと言いつつ凄いオーラを放っていませんか?
僕も王都で自分自身を毎日鍛えていたはずなのに、エミリア様の強さが前よりも感じているよ。
いつもは後の先だけど、今日は先手だけしか取らせてもらえなさそうだ。
シュッ、バシッ、バシッ!
「せい、やあ!」
「いいわよ、どんどんと攻めてきなさい」
エミリア様は、ただ僕の突きや蹴りを軽々と受け止めていました。
傍目からは一方的に僕が攻めているように見えるけど、僕としてはエミリア様から放たれる重圧を受け止めるのに必死だ。
「じゃあ、そろそろ私も攻撃をしないとね」
ブオン、ブオン。
エミリア様から放たれる一撃一撃が重い攻撃を回避しつつ、僕も反撃を続けた。
やっぱり、エミリア様はとんでもない強さだ。
こうして、とんでもなく長く感じた五分間の手合わせは終了したのだった。
「はあはあはあ……」
「シュンは、順調に強くなっているわね」
息の荒い僕に対し、エミリア様は涼しい顔をしていた。
僕が圧倒されたエミリア様の強さに、他の人は思わず言葉を失っていた。
ところが、エミリア様は僕にとんでもないことを言ってきたのです。
「シュンは、明日からハードコースでいいわね。徹底的に鍛えてあげるわ」
エミリア様のハードコースだなんて、地獄の特訓としか思えなかった。
スーは、僕に気の毒な表情を見せていました。
僕は、思わずガックリとしてしまったのだった。




