散歩の千九十六話 辺境伯様と先代様はどこに?
コンコン。
「おかーさま、スーお姉ちゃんが来たよ!」
「ええ、入って頂戴」
ケントちゃんも、しっかりと礼儀作法を勉強しているんだね。
応接室からエミリア様の声が聞こえたので、僕たちも部屋の中に入ります。
ガチャ。
「失礼します」
「みんな、いらっしゃい」
「「あうー」」
応接室では、エミリアさんが二人の赤ちゃんを抱っこしながら僕たちを出迎えてくれました。
男の子がジェフちゃんの弟で、女の子がトリアさんの妹みたいですね。
「お姉様、少しの間お世話になります」
「ゆっくりとしてとは言えないけど、旅の疲れを癒やしてね」
「「あうあう?」」
うん、赤ちゃんたちは突然現れた僕たちに興味津々だ。
挨拶を終えたスーに、早速抱っこして欲しいみたいですね。
「あのね、マイクちゃんとランちゃんだよ!」
「「「「「可愛いね!」」」」」
流石にスー一人では大変なので、シロも赤ちゃんを抱っこします。
屋敷でガイちゃんとブレアちゃんを抱っこしていたので、赤ちゃんを抱っこするのはお手の物です。
でも、僕は別のことが気になりました。
「エミリア様、辺境伯領様と先代様はどうしたのですか?」
「実はね、このタイミングで辺境伯領の司祭が交代になると言ってきた馬鹿が教会にきたのよ。それで、ちょっと揉めているのよ」
エミリア様も深い溜息をついているけど、まさかそんなことが起きているなんて。
しかも、たまたま教会で奉仕活動をしていたトリアさんのお母さんにも喧嘩を売ったらしい。
うん、絶対に嫌な感じがしますね。
「私も動きたいのだけど、あなたたちを出迎えないといけなかったのよ。でも、もう出迎えも終わったので遠慮なく動けるわ」
エミリア様、笑顔で黒い怒気を垂れ流さないで下さい。
赤ちゃんを含めたちびっ子たちが、一瞬ビクッとしていますよ。
すると、このタイミングで応接室に入ってきた人がいました。
コンコン。
「歓談中失礼いたします。教会でのトラブルですが、押しかけた聖職者が主に獣人などを挑発し一触即発の事態となっております」
「「「「「えっ!?」」」」」
兵が説明した内容に、僕たちはかなり驚いてしまった。
とはいえ、僕はあることを考えていた。
「シュンの考えていることを、私も思いついていたわ。さあ、行くわよ」
エミリア様は、待っていたと言わんばかりにソファーから立ち上がった。
スーたちは、そのまま赤ちゃん二人の面倒を見てもらいましょう。
アオも僕とエミリアさんについてきてくれるので、教会に行っても余程のことがない限り大丈夫ですね。




