散歩の千九十三話 問題の子爵領に到着
そして、この通信用魔導具の新機能が別のところで役立つことになった。
それは、前回西の辺境伯領から王都に帰る際にも問題を起こした貴族主義の子爵領でのことだった。
「スーザン様、シュン様、面会を行わない場合は領内を通行させないと連絡が来ております」
防壁の門で兵と対応していたアヤが、少し困った表情で報告してきた。
前回も何故か面会を要求してきて、トーリー様の激怒で怯んだんだっけ。
西の辺境伯領から調査を受けて大目玉を食らったはずなのに、全く反省していません。
「みんな、ここからは戦闘モードになるかもしれないから気を付けてね」
「お馬さんも、分かっているって言っているよ」
「「ブルル」」
うちの馬も、前回足止めを食らったのをよく覚えていた。
そして、若馬に懇切丁寧に教えていた。
王国軍も一緒に同行しているし、ついでなので一緒に来てもらいましょう。
「また、あの角刈り坊ちゃんなのね……」
「私たちが王都に帰る時も、難癖付けてあーだこーだ言ってきたのよ」
ケーシーさんとテルマさんも、思わず愚痴を言っていた。
毎回街道を通る貴族に難癖つけているんだね。
僕、スー、シャーリーさん、ケーシーさん、テルマさん、リアーナさん、それに軍の兵が一緒についていきます。
もちろんこの時点で通信用魔導具で偉い人たちに連絡していたら、もの凄く激怒していた。
既に西の辺境伯領からの派兵も決定し、前回説教を食らった坊ちゃん刈りの痩せている子爵の命運はもう風前の灯火ですね。
更に、あることをして屋敷内に入りました。
「お館様をお呼びしますので、少々お待ち下さい。
前回と同様に、使用人に応接室に案内された。
やはり、使用人はキチンと仕事が出来ますね。
出されたお茶や菓子も、全く普通のものだった。
「さてさて、様子を見ましょうか」
「そうですわね。そこに誰かいるのは良く分かっていますわ」
スーだけでなく、この場にいる全員が呆れた様子で応接室のドアの方に視線を向けた。
探索魔法を使うまでもなく、ドアの外で誰かがウロウロとしながら様子を伺っているのが分かった。
本人としては隠れているようだが、足音がしたり誰かとこそこそと話す声も聞こえた。
うーん、全然対応が改まっていないね。
十分。
二十分。
三十分。
四十分。
やはりというか、子爵は応接室の外で様子を伺っているだけで中には入ってこなかった。
そして、スーが通信用魔導具を使って偉い人たちに全て包み隠さず送信していたのだった。




