散歩の千八十五話 問題のある人は静かに退場してもらいます
流石に子どもの前で母親を叱らないようにと、王妃様と教皇猊下は大教会の中に入っていった。
「失礼いたします、王妃様と教皇猊下がお呼びです」
「「「「「あら、何かしら?」」」」」
そして、問題のある数名の母親はシスターさんに大教会の中に向かうようにと呼び出された。
スーたちも、大教会の中に入っている子どもの母親を目で追っていた。
しかし、直ぐに自分の作業に集中した。
自分勝手な論理を言っているものの末路など、あまり気にしても無駄だということですね。
僕も、炊き出しの仕込みの続きをします。
「うーん、なんというかテーブルの雑巾がけもできないレベルなんですね」
ジョディーさんもびっくりするほど、連れて行かれた親の子どもは何にもできなかった。
年齢的にはシロやジョディーさんと同じくらいなのに、言われたことしかできないのかテーブルを適当にこすってるしかやらなかった。
うーん、あそこまで自主性がないとちょっとジェフちゃんの近習になるのは不可能だ。
それこそ、未来の王妃様なんて夢のまた夢ですね。
ぞくっ。
突然大教会の中から殺気が膨れ上がり、僕たちは一斉に大教会の中を向いた。
うん、間違いなくお説教モードに入っている二人から発せられたものですね。
ジェフちゃんたちも、思わず殺気が放たれた方向を見ていた。
ある意味、気配察知に優れているということが証明された。
しかし、どうやらあの母親はこの国でも上位の人たちに喧嘩を売ったみたいだ。
処罰などはないはずだが、それ以上に出世の道が完全に断たれたことにもなるだろう。
そして、シスターさんは子どもたちにも大教会の中に入るようにと呼び出された。
恐らく、このまま馬車に乗って退場でしょうね。
「ふう、久々にみた馬鹿ものじゃのう」
「全くですな。あそこまで自己的なものは久々に見ましたぞ」
十分後、大教会の中からぷりぷりしている王妃様と教皇猊下が姿を現した。
何かあったのか興味あるけど、君子危うきに近づかずですね。
あとで、甘いものを差し入れしておきましょう。
「シュン、何か甘いものを作るのじゃ」
「特別甘いものが欲しいのう」
と思ったら、先にお二人からリクエストを頂いてしまった。
僕は、果物をふんだんに使ったパンケーキにバタークリームとハチミツをかけた。
体が糖分を欲していたのか、お二人はあっという間にぺろりと食べてしまった。
しかも、おかわりまで要求されてしまったのだ。
ちびっ子たちが二人のことを羨ましそうに見ていたけど、いまは未だ我慢ですよ。




