散歩の千七十五話 臨時ベビーシッター
「じゃあ、行ってくるね!」
「「「「「いってらっしゃーい!」」」」」
ジェフちゃんの近習候補の面接がない時は、シロとアオは引き続き軍と共に町の巡回を行っていた。
若馬も巡回にだいぶ慣れてきて、犯罪者の気配とかをアオから教わっているという。
コリーナちゃんとレンちゃんも一緒に町の巡回をしたいと言っていたけど、もう少し大きくならないと駄目だね。
それに、今は勉強するのが優先です。
ということで、今日もみんなは勉強中です。
「僕は、お仕事頑張ってくるね!」
「「「「「いってらっしゃーい」」」」」
ジェフちゃんは、スーと一緒に新年の公務に行ってきます。
王族のしての義務でもあり、新年だから暫くは忙しいでしょうね。
僕も、仕事に戻りましょう。
「あぅ」
「あの、何でこんなことになっているのでしょうか……」
現在僕は、マリアちゃんを抱っこ紐で抱っこしながら仕事をしています。
王太子様も公務で、王太子妃様も王妃様と共に公務です。
必然的に赤ちゃんのマリアちゃんはお留守番なのですが、たまたま僕が抱っこしたら離れなくなっちゃいました。
お世話係の侍従に預けようとすると泣き出すし、ベッドに寝かせようとするとグズります。
仕事をしないといけないので、やむなくこんな姿です。
執務室にいるお世話係の侍従も職員も、もはやなすすべなしって表情ですね。
「シュン様は、赤ちゃんのお世話もとても上手ですから……」
「そうですよね、他の子どものお世話も上手ですね」
「今日はそんなに仕事はないですし、ゆっくりやりましょう」
侍従も職員も、もうこんなことを言っています。
マリアちゃんはというと、ご機嫌で僕の顔を触ったりワタワタしたりします。
時々おむつを替えたりミルクを飲ませたりするけど、眠ることなく元気いっぱいです。
こうして、暫くマリアちゃんを抱っこしたまま公務を続けていました。
ガチャ。
「あらあら、こっちにいたのね」
「あー!」
お昼前になり、王太子妃様が執務室に入ってきました。
マリアちゃんも、お母さんを見つけて手を伸ばしていますね。
マリアちゃんを王太子妃様に渡し、ようやく解放されました。
「シュンさんに抱っこされて、とっても楽しかったのね」
「あー!」
王太子妃様に、マリアちゃんは手をワタワタさせながら元気よくアピールしていました。
微笑ましい光景だなと思っていたら……
「すー、すー」
「あらあら、遊んでもらって疲れちゃったのかしら」
あれだけ大騒ぎして寝なかったマリアちゃんが、あっという間に寝てしまったのです。
やっぱり、お母さんは偉大ですね。
侍従も職員も、流石だと王太子妃様を見ていました。
この後、マリアちゃんはぐっすりとお昼寝をしていたそうです。




