散歩の千四十三話 成敗!
さてさて、先代夫人はどう対応するのかな。
僕は、剣を構えつつ魔法もいつでも放てるように待機します。
すると、先代夫人は何を血迷ったのか僕に対してとんでもないことを言ってきたのです。
「おい、そこの小僧。年増をその剣で殺せ」
先代夫人は、命令するだけで自分の力でどうこうする訳ではなさそうです。
というか、なんで僕が王妃様を殺さないとならないのでしょうか。
「あの、ご自分の立場を分かっていらっしゃいますか?」
「煩いわ! 私がこの世で一番偉いんだよ。さっさと、この年増を殺しやがれ!」
駄目だこりゃ。
僕では、全く話が通じないよ。
すると、王妃様が呆れながら僕に命令をしてきました。
「はあ、愚かだのう。まさかここまでとは思わなかったぞ。シュンよ、キツイお仕置きをしてやるのじゃ」
僕が誰の命令を聞くのか、普通に考えれば直ぐに分かるはずです。
まともな判断ができない先代夫人には、全く分からないかもしれないけどね。
シュイン、バチバチバチ。
「それでは、先代夫人様。お覚悟を」
「や、や、やめろ。やめるのだ!」
僕は、右腕を上げて敢えて大きな音で雷撃の魔法玉を発動します。
先代夫人は、これから自分の身に降り注ぐ魔法の恐怖に怯えています。
でも、完全に自分が蒔いた種だもんね。
ということで、潔くノックアウトしてもらいましょう。
ポイッ。
バリバリバリ!
「ギャー!」
バタリ。
あまり電撃の強さを上げると、キチンと罰を受ける前に先代夫人の心臓が止まってしまいます。
とはいえ、痛みはキチンと感じてもらわないといけません。
微妙な魔力コントロールだったけど、何とか上手くいったみたいです。
先代夫人にとっては、かなりのダメージみたいだけどね。
因みに、腕にナイフが刺さっている嫡男と令嬢は兵によって軽く止血されて連行されていきました。
他の動けないデヨーク伯爵一家も、それぞれ担架に乗せられて連行されていきました。
「ふむ、ようやく害虫駆除が終わったか。直ぐに捜索を開始するのじゃ」
「「「はっ」」」
王妃様の命を受けた兵が、手分けして執務室内の捜索を開始しました。
僕も、ホッとひと息です。
すると、アオが執務室に入ってきました。
どうやら、一仕事終えたみたいですね。
「王妃様、アオが屋敷の使用人の確認を終えて八割近くを拘束したそうです。また、どうも嫡男が悪魔族の使用人を暴行してあの赤ん坊が産まれたらしく、その使用人も出産後に満足な手当てを受けずにいて重体だったそうです。アオが治療して、直ぐに大教会の治療施設に搬送されました」
「貴族当主家が馬鹿者だと、使用人も馬鹿者揃いじゃのう。となると、その赤ん坊はガードとレンと同じ対応になるのう」
ガード君とレンちゃんは、実家の捜索を受ける前に僕たちに保護されたことになっています。
あの悪魔族の赤ちゃんも、強制捜査よりも先に大教会で僕たちが保護したことになっています。
それに、間違いなくあの赤ちゃんと母親はデヨーク伯爵家の被害者です。
そう考えると、ベリアさんとガイちゃんを保護した時と似た状況でもあるんだ。
なんにせよ、デヨーク伯爵家への捜索と赤ちゃんと母親の保護という二面で動かないといけません。
赤ちゃんは、母親の体調が良くなるまではうちで預かることになりそうですね。




