散歩の千四十一話 作戦失敗(相手が)
「デヨーク伯爵、そなたはどの様にして爆発型の魔導具を手に入れたのじゃ? よもや、人神教と手を組んだ訳ではないか?」
「ふん、そんなチンケな宗教に手を出さずとも、我がデヨーク伯爵家ならそのくらいいくらでも手に入る」
どうして、こうも馬鹿正直に話をするのだろうか。
デヨーク伯爵に質問した王妃様も、まさかの回答にかなり呆れていますね。
「デヨーク伯爵夫人は陛下の妃候補に挙がっておらぬが、まさか自分は王妃候補だと思っていたのか?」
「そんなもの、当たり前よ! 王妃になって贅を尽くすのは、令嬢なら当たり前の願望よ!」
今度は、顔を真っ赤にしながら話すデヨーク伯爵夫人の馬鹿な言い分に僕は呆れてしまいました。
贅沢をするために王妃候補になろうとするから、最初から候補者から外れるのですよ。
すると、今度は嫡男がニヤリと歪に笑いながら懐から爆発型の魔導具を取り出したのです。
「ふふふ、俺たちに逆らった罰だ。ここで、全員死ぬが……あれ? あれれ?」
威勢がいいのは最初だけで、嫡男は爆発型の魔導具の使い方を間違えたみたいです。
なんというか、目の前で笑いにならない寸劇が繰り広げられていますね。
もちろん、僕が魔法障壁でみんなを守っていますよ。
シュイン、ウィーン。
「あっ!?」
僕は、念動で嫡男から爆発型の魔導具を奪い取ります。
そして、チャチャっと魔導具から魔石を取り外しました。
嫡男は僕の早業に唖然としているけど、このくらいならアオもあっという間にできます。
「ついでだから、全員分の爆発型の魔導具をもらっちゃいますね。この部屋にある分もです」
「「「「なっ!?」」」」
先代夫人、デヨーク伯爵夫妻、令嬢も爆発型の魔導具を持っているなんて、いったいどういうことでしょうか。
一つ爆発すれば、誘爆して全部爆発するのにね。
そうなれば、僕や王妃様なら防げるけど、果たしてデヨーク伯爵一家に爆発を防げる人がいるのだろうか。
全部念動で奪って、魔導具から魔石を外します。
屋敷の倉庫っぽいところにも爆発型の魔導具があるのを探索魔法で確認していたけど、既にアオによって全部解除済みです。
そして、目の前のグタグタ劇場で、遂にこの人の堪忍袋の尾が切れてしまいました。
ズゴゴゴゴ……
「随分と、おかしな魔導具があるのう。一つ所持するだけで大変な罪になるのに、よもやこの場で爆発させようとはのう。ふふ、覚悟はできておるな」
「「「「「あわわわ……」」」」」
王妃様の隠すことない怒気に、デヨーク伯爵一家は今更ながらヤバいと思ったみたいです。
しかし、既に時遅しって状態ですね。
そして、更にデヨーク伯爵一家は追い詰められることになります。
「「「投降します……」」」
「素直が一番じゃ。投降を認めるぞ」
「「「「「なっ!?」」」」」
執事やならず者たちは、素直に観念して武器を捨ててこちらにやってきました。
直ぐに武装解除されて拘束されたけど、この後起こるであろうデヨーク伯爵家への対応に比べれば平和そのものです。
その、デヨーク伯爵一家も投降するなら今のうちですよ。




