散歩の千四十話 執務室に突撃します
僕たちは、周囲の様子を確認しつつ執務室に向かいます。
すると、アオが何かに気がついたらしく、執務室の扉を開けたら別の場所に向かうとアピールしていました。
「こ、こちらに、なります……」
「うむ、ご苦労。下がって良いのじゃ」
王妃様は、直ぐに使用人を下がらせました。
その間に、兵が執務室のドアを開けようと試みます。
ガチャガチャ、ガチャガチャ。
うん、案の定執務室のドアには鍵がかかっています。
予測したとおりだと、アオはぴょーんとドアの鍵穴に飛びつきました。
ガチャガチャ、ガチャ!
アオは、直ぐに執務室のドアの鍵を開けます。
そして、僕と王妃様に触手をフリフリとして二階に向かったのです。
ここは、アオに任せましょう。
「な、なな……」
「なぜ鍵が開いた!?」
執務室の中には、横に大きいスキンヘッドの当主と、これまた横に大きい夫人の姿がありました。
執事の姿だけでなく、複数のならず者の姿もあります。
更に嫡男と令嬢だけでなく、悪の大元である先代夫人の姿もありました。
すると、王妃様は何となく状況に気がついたみたいです。
ビシッと、鉄扇をデヨーク伯爵たちに向けたのです。
「ふふ、そういうことじゃったか。デヨーク伯爵もしくは嫡男が、使用人に手を出して産ませた子どもを自爆テロの道具に使ったとはのう。妾たちは、どんな種族の子どもでも慈しみを持って接する。それを利用するとはな」
王妃様は、牽制の意味でカマをかけたのでしょう。
しかし、王妃様の挑発的な言葉に先代夫人が思いっきり引っかかったのです。
「ふん、孫をのけ者にしたお前らが悪い。私の言う事を聞いて、孫を王太子妃にするか王女を嫁に寄越せば済んだ話だよ」
「なぜ、王族がそなたの言う事を聞かなければならないのじゃ? そもそも、そなたの孫は素行不良で最初から嫁や婿の選定対象に入っておらぬ。全ては、お主が甘やかせ過ぎたからじゃ!」
「そうやって、私をのけ者にするのがいけないんだよ。元を辿れば、私を王妃候補から外したのが原因だよ!」
どうやらこの先代夫人は、先代陛下の王妃候補だと勝手に思い込んでいたみたいです。
自分が王妃候補から外れ、そして孫を王家に送り込もうとして失敗し、更にはスーを婿にしようとして失敗した。
完全に自業自得なのだけど、この先代夫人は執念深い性格みたいです。
なら、王族の全てをぶち壊そうと思ったのでしょうね。




