散歩の千三十九話 デヨーク伯爵家に突撃です
大教会から程なくして、デヨーク伯爵家に到着しました。
通常の強制捜査の三倍の兵が集まっているけど、爆発型の魔導具を使って無差別テロをしたのだから仕方ないですね。
因みに、シロとノア君は引き続き大教会周辺の警戒を続けていて、アオと若馬は強制捜査に参加していました。
「おい、ここを開けろ!」
「お館様の命により、開けることはできない」
いつもの如く、門を挟んで兵と門番の押し問答になっています。
悪人とはいえ、当主の命だと動かないといけないもんね。
でも、この人にとっては全然関係ないことです。
「アオよ、今すぐ門を開けるのじゃ」
王妃様は直ぐにアオに指示をし、アオも王妃様に臣下の礼をしてからぴょーんと門に張り付きました。
ガチャガチャ、ガチャ!
「へっ?」
アオの素早い解錠術に、門番は間抜けな声を上げていました。
その隙に、一気に兵が屋敷の中になだれ込みます。
「屋敷だけでなく、敷地内のあらゆるものも調べるのじゃ。意外なところから、証拠が出てくる時もあるぞ」
「「「はっ」」」
王妃様は兵に指示を出し、僕たちと共に屋敷に向かいました。
この敷地には倉庫もあるし、色々なものが出てきそうですね。
ガチャガチャ、ガチャガチャ。
そして、玄関ドアにも鍵がかけられていました。
でも、流石にこのくらいは予想済みです。
またもや、アオがぴょーんと玄関ドアの鍵穴に飛びつきました。
ガチャガチャ、ガチャ!
「よし、突入じゃ!」
「「「はっ」」」
難なく開いた玄関ドアから、一気に兵が突入していきます。
しかし、玄関ホールに僕たちを待ち構えていたものがいました。
「こ、ここは通さな……」
「邪魔じゃ!」
ブオン、バシン!
「ぐはっ……」
なんと王妃様がドレスの胸の谷間から鉄扇を取り出し、待ち構えていたならず者の顔面ををぶん殴ったのです。
僕とアオもならず者をノックアウトしたけど、早くしないと王妃様がならず者を全員倒してしまう。
こうして、玄関ホールは一瞬にして制圧されました。
王妃様に鉄扇でぶん殴られたならず者は、ぴくぴくしながら床に横たわっていました。
「デヨーク伯爵は、どこにいるのじゃ?」
「しししし、しつ、執務室におります……」
腰を抜かしている使用人が、震えながらも何とかデヨーク伯爵のいる位置を言いました。
王妃様の獅子奮迅の動きを見れば、とてつもない恐怖を味わうはずです。
でも、王妃様も護衛を押しのけて前へ進まないで下さいよ。
多分、無理だと思うけど……




