散歩の千三十七話 卑劣な事件
それは、治療班での出来事でした。
小さな男の子が、何かを持ちながらトコトコと歩いてきたのです。
「あら、それはどうしたのかしら?」
「知らないおじちゃんが、持っていってと言ったの」
スーが小さな子にニコリと話しかけたけど、僕とアオは直ぐに持っていたものがとんでもないものだと気が付きました。
シュッ、パシッ。
ブオン!
「あっ!?」
アオが小さな子に急いで近づいて、持っていたものを奪い取って上空高くに投げ飛ばしたのです。
更に、僕は大教会を包み込むように強固な魔法障壁を発動させました。
シュイーン、ズドーーーン!
「「「なっ!?」」」
突如として、上空高くで大爆発が起きたのです。
周囲に衝撃波が広がったけど、幸いにして建物への影響は少なそうです。
僕も、急いでスーのところに駆け寄りました。
「スー、西の辺境伯領でもあった爆発型の魔導具だ。小さな子なら、僕たちのすぐ近くまで運ぶことができると思ったみたいだ」
「そんな、なんて酷いことを。では、この子は自爆テロにさせられそうになったのですね」
スーは、思わず小さな子を抱きしめていました。
一方で、小さな子は何が何だか分からないみたいですね。
そして、直ぐにお偉い方が動き始めました。
「兵よ、全力で容疑者を探し出すのじゃ!」
「聖騎士も直ぐに動くように。これは、重大な犯罪だ!」
「「「はっ」」」
王妃様と教皇猊下が指示を出し、一斉に動き始めたのです。
非常事態ということで、アオも周辺の捜索に動き出しました。
僕も、赤ちゃんの世話をしていて広範囲探索魔法を使っていなかったんだよなあ。
もしかしたら、僕たちの動きを封じ込める為に、赤ちゃんを遺棄したのかもしれない。
そんな中、もう一人活躍していた子がいました。
「ガード君、もう魔法障壁を閉じてもいいよ」
「ふ、ふう……」
ガード君は、咄嗟に魔法障壁を展開してジェフちゃんたちを守っていたのです。
毎朝の訓練の成果が出せて、ガード君もかなりホッとしていました。
「ガードよ、よく孫を守った。小さい子が普通はできないことじゃぞ」
王妃様も、ガード君のことを手放しで褒めていました。
というのも、ガード君の魔法障壁の後方に、王妃様と教皇猊下がいたのです。
さり気なく王妃様も魔法障壁を展開していたけど、これは中々の功績と言えましょう。
「「「ガード君、凄い!」」」
「わわっ!」
ジェフちゃんたちは、ガード君を囲んで大興奮しながらワイワイとしていたのです。
当のヒーローのガード君は、ちょっと照れた表情ですね。




