散歩の千三十六話 ちょっと面倒くさい話に?
暫くすると、赤ちゃんはベビーベッド代わりのバスケットの中でスヤスヤと眠り始めた。
僕も、かなりホッとしました。
「はいはい、次は君の番ね」
「あい!」
今度は、ブレアちゃんのおむつを手早く替えます。
ブレアちゃんも、おむつ替えの時は大人しくしてくれるので本当に助かります。
おむつ替えが終わったブレアちゃんは、トコトコと赤ちゃんが眠るバスケットに近づきました。
「あ!」
「そうだね、赤ちゃんだね」
「あー!」
ブレアちゃんは、赤ちゃんがいると指を差しながら僕に教えてくれます。
ルーちゃんとも会っているから、赤ちゃんという存在に何となく気がついているんですね。
しかし、何で赤ちゃんを遺棄するようなことが起きたのでしょうか。
念の為に赤ちゃんを鑑定すると、ある名前が出てきました。
「赤ちゃんの名前は出てこないけど、デヨーク伯爵ってファミリーネームがついているなあ。ということは、この子は貴族の子どもなのかな」
よく知らない貴族名だったので、ここは詳しい人に聞いてみよう。
ということで、詳しい人のところに赤ちゃんの入ったバスケットとブレアちゃんを連れて向かいました。
「これは、面倒くさい貴族の名前が出てきたのう。デヨーク伯爵は、王太子妃争いに敗れ、今度はスーを嫁にしようとして妾が拒否したものじゃ。欲の塊で、ちょっとしたことでキレる厄介者じゃ」
思わずため息をついた王妃様を見て、なんというかとんでもない貴族だということが分かりました。
そして、この赤ちゃんも面倒くさいことに巻き込まれているということが判明しました。
「デヨーク伯爵は、先代はとてもいい人物じゃった。しかし、後を継いだ息子は全く使い物にならない。もちろん、奉仕作業などにも顔を出さぬ。下人に奉仕して何の意味があるという考えじゃ。それもこれも、先代夫人が息子を甘やかせ過ぎたからじゃ」
毒親に育てられて、自分も毒息子になってしまったらしい。
王妃様曰く、この二人は話が通じない相手らしいです。
うーん、この赤ちゃんを返そうとなると完全に大揉めになる予感しかしません。
「おお、元気な子どもじゃ。とても良い父親に恵まれておるな。父親と母親を兼ねているかもしれぬがのう」
「キャッキャ!」
そして、ブレアちゃんはいつの間にか教皇猊下に抱っこされていてとてもご機嫌な表情でした。
教皇猊下も、子どもの相手は得意なのか慣れた感じで抱っこしていますね。
こうして、少し事態が落ち着いたところで、今度はとんでもない大事件が起きてしまったのです。




