散歩の千三十五話 ちょっと緊急事態?
スーとアオも治療班に合流し、本格的に奉仕活動が始まりました。
炊き出し班も調理が始まり、良い匂いが漂っています。
「あう!」
「そうだね、良い匂いだね」
「あー」
僕も、ブレアちゃんをおんぶ紐でおんぶしながら調理を再開しました。
今はひたすらおにぎりを握っていて、順に焼きおにぎりにしています。
甘辛いタレで焼いたお肉や野菜を炒めたものを中の具材にしているものは、焼きおにぎりにしないでそのまま提供します。
混ぜご飯風にしたものは、握れは完成ですね。
むしゃむしゃ。
「うむ、これは中々美味いのう。この甘辛く煮た肉が良い味を出しておるのじゃ」
「そうですな。この混ぜおにぎりなども良いですぞ」
あの、王妃様、教皇猊下、毎回のことですが真っ先に試食役に立候補しないで下さい。
問題はないと分かって安心しているけど、試食を持って行ったシスターさんもちょっと戸惑っていましたよ。
ちびっ子たちにも好評だったので、そのまま住民にも提供します。
そして、僕は治療班と炊き出し班の両方をサポートすることにしました。
僕が頑張らなくても、他の人たちが頑張っているので奉仕活動自体は順調に進んで行きました。
「おなかすいたよー」
「にゃーん」
「あら、それは大変ね。こっちに来て頂戴ね」
そして、奉仕活動を行うと必ず現れる孤児の保護も行なっています。
今も、子猫を抱いた小さな女の子が治療班のところに現れました。
この辺りのマニュアルはしっかりとしているので、シスターさんが直ぐに対応します。
小さな子どもを抱いた寡婦もやってくるけど、この辺りの対応もバッチリです。
しかし、またまた予想外のことが起きてしまいました。
「おい、小さな赤ん坊を置いて逃げたのがいるぞ!」
「おぎゃー!」
炊き出しの列に並んでいる人が大声で叫び、直ぐにシロがうちの馬と共に追いかけます。
僕がブレアちゃんをおんぶしたまま急いで駆けつけると、まだ生まれたてだと思われる女の子がタオルに包まれていました。
この銀髪と特徴的なツノは悪魔族ですね。
ヴィヴィは天使族と悪魔族のハーフだけど、純粋な悪魔族の子どもは初めて見た気がします。
何にせよこのままにはしておけないので、赤ちゃんに回復魔法と生活魔法をかけて、アイテムボックスからオムツを取り出してはかせます。
産着を着せて、大きめのバスケットに入れてあげます。
ここまでしたら、治療班のところに連れて行きます。
「わあ、飲んでいるよ!」
「お腹空いていたんだね」
温めた山羊の乳を哺乳瓶に入れて、先ほど保護した赤ちゃんに飲ませます。
現在休憩中のカールちゃんとアンジェちゃんが、僕の両側から赤ちゃんを覗き込んでいました。
これで何とか落ち着いたけど、この赤ちゃんを置いていった理由は何だろうか?
「シュンは、常に育児道具を持っているのか。やはり、直ぐに母親になれるのう」
あの、王妃様、常備している道具一式はガイちゃんとブレアちゃんの分ですよ。
僕は、まだまだ父親には早いですよ。




