散歩の千二十六話 若馬を買い取ることに
「因みに、その商会のことは軍に通報しておいた。捜査が行われたかは分からないが、碌なことはやっていないだろうな」
技師もかなり怒っているが、実は毎日若馬にポーションをかけたりしてここまで回復させたという。
この馬車工房に持ち込まれた時は、本当に酷い怪我だったようですね。
ちょうど捜査機関のトップは身内なので、さっそくスーが通信用魔導具でガンドフ様に問い合わせた。
「叔父様に確認したら、ちょうどこれからその商会に強制捜査を行うそうです」
「「「悪者を捕まえるよ!」」」
「「ヒヒーン」」
ズドドドドドドド……
あっ、シロたちが馬の背中に飛び乗ってアオと共に騎士団の詰所に向かっちゃいました。
うーん、あまりにも素早い動きだったから、僕もスーもみんなを止められなかったよ。
アオがいるから多分大丈夫だと思いながら、僕たちは先に手続きをすることにしました。
「この芦毛の若馬は、僕たちで買います。あと、幌馬車も一台お願いします」
「おう、分かった。馬車のメンテナンスもしっかりとやっておくぞ」
話は直ぐについたので、購入手続きを進めます。
そして、技師は芦毛の若馬に話しかけました。
「良かったな、主人としては最高のところだぞ。まあ、退屈はしないだろうな」
「ブルル」
あの、確かに僕たちと一緒にいるとイベントは事欠かないけど、自ら進んで危険な目には合わせないですよ。
若馬は、そのまま僕の屋敷に連れて行くことになりました。
そして、別の問題が発生です。
「うーん、どうやって帰ろうか……」
うちの馬はシロたちと共に騎士団の詰所に行ってしまったので、予備の馬車を引く馬がいません。
かといって、流石に怪我から治ったばかりの若馬に無理はさせられません。
すると、技師が屋敷まで馬車工房の馬で送ってくれることになりました。
「では、私はシロちゃんのところに合流しますね」
「ヒヒーン」
そして、スーは馬具の調整を完了させた若馬に乗って騎士団の詰所に行ってしまいました。
スーも、若馬を虐待した件でかなり頭にきているみたいですね。
僕も、屋敷に戻ってから最近飼い始めた馬に乗って騎士団の詰所に向かいました。
結果から言うと、僕が騎士団の詰所に行った時には既に商会は怒れるちびっ子とうちの馬の奇襲によって壊滅していました。
更に不正の証拠を残さず探し当てたそうです。
ちゃんと騎士団と一緒だったのに、うちの馬が身体能力強化魔法を使って置き去りにしたらしいです。
そのために、ちびっ子たちとうちの馬は後から追いついたスーとガンドフ様に先走って行動しないと滅茶苦茶怒られたそうです。
そして、うちにやってきた若馬はいきなりやべーところにきたと思ったそうです。




