散歩の千十九話 別の勉強も研究しています
そして、勉強部屋の別のスペースにはシャーリーさんと三人の職員の姿がありました。
シャーリーさんはスーよりも大きいので、今更小さい子がやっている初歩的な勉強は必要ありません。
「シャーリーさんはいきなり貴族当主になりました。過去にも、いきなり貴族当主になってかなり苦労した人がいたそうです。そこで、良い機会なので簡単な当主の仕事を纏めています。もちろん法衣貴族と領地持ち貴族では対応が異なるので、今回は法衣貴族のものです」
僕が説明すると、各辺境伯様はうんうんと頷いていました。
当主だけでなく、執事や家臣も知っていて問題ない内容です。
新しい家臣になったものへの教育としても使えますね。
では、集中して勉強して僕たちに全然気が付かないシャーリーさんに挨拶をしてもらいましょう。
ちょんちょん。
「シャーリーさん、スーですよ」
「うん? あっ、えっ!?」
スーに肩をちょんちょんとされて、シャーリーさんはようやく僕たちの存在に気が付きました。
一緒に資料を纏めていた職員はとっくに僕たちに気が付いていて、思わず苦笑いしていました。
そして、シャーリーさんに各辺境伯を紹介します。
「皆さま、我が家のものが大変ご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ありません」
「うむ、謝罪を受け入れよう。家のものが失敗をしたからといって、嬢が失敗しなければいい。これからも精進に励むように」
西の辺境伯様は、かなり偉そうな態度でシャーリーさんに返事をしていました。
もしかしたら、辺境伯としての威厳を出そうとしたのかな。
素の姿を知っているので、僕とスーは思わず苦笑いしちゃいました。
でも、よく考えると西の辺境伯領が一番教会の影響を受けるんだよなあ。
「しかし、シュンは既に大人向けの教育まで考えていたのか。確かに、大人になっても勉強しなければいけないことは多々ある」
「当主の仕事など、各家によってバラバラだ。統一した基準を設けることは悪いことではないな」
東の辺境伯様と南の辺境伯様は、シャーリーさんの行なっている勉強の効果に直ぐに気が付いてくれました。
僕も新しい世界に来てから日々勉強しているし、その苦労をできるだけ少なくなってくれればいいなって思っています。
「まあ、シュンの場合は頭が良いからこういう勉強は不要だろう。むしろ、講師の立場だな」
あの、北の辺境伯様、僕は流石に大人向けの講師をするには経験不足ですよ。
王太子様も、うんうんと北の辺境伯様に同意しないで下さい。
こうして、勉強部屋の見学は無事に終了しました。
午後からは、聖教皇国に行く件での打ち合わせですね。




