散歩の千十六話 段々と真剣な話になります
雑談から入った各辺境伯様との話し合いも、段々と真剣味が増してきました。
「我が領地の教会は今のところ問題ないが、別の領地では例の枢機卿と繋がっていたものがいた。聖教皇選挙が、地方都市まで影響を与えるとはな」
若干気を持ち直した西の辺境伯様が、腕を組んで深刻そうに話をしていました。
西の辺境伯領は聖教皇国と繋がっているのもあるので、余計に影響が大きそうです。
「しかも、あのバカな枢機卿は人族主義だ。前々から獣人が多い西の辺境伯家に、人族を優遇しろという馬鹿な要求をしていたぞ。人族だろうが他の種族だろうが、そんなもの関係ないだろうが」
お菓子を大量に頬張りながら、西の辺境伯様が文句を言っていました。
ゲス枢機卿の背後に、人神教が繋がっているとしか考えられないですね。
「ただ、馬鹿な一派が何回も馬鹿をやったのもあり、最近はかなり大人しくなった。親に刺されたシスターの件も、奴らにとってはかなりの痛手だろう」
遂には全てのお菓子を食べ尽くしながら、西の辺境伯様が感想を述べていました。
そして、アヤとアイがササッとお菓子を補充します。
何にせよ、来年僕たちが聖教皇国に行く際には十分に気をつけないといけないですね。
「しかし、シュンとスーに既に敵認定されているとは。その枢機卿も馬鹿なことをしたものだ」
「全くですな。自ら死刑執行書にサインしたも当然ですぞ」
「アオにも喧嘩を売った事にもなるとなると……はあ、占い師でもないのにこうも簡単に未来が分かるとは」
あの、南の辺境伯様、東の辺境伯様、北の辺境伯様……
流石に、僕もスーも他国で暴れるようなことはしないですよ。
壊滅とか、そもそもできないですから。
スーも、もはや苦笑いしかできませんでした。
そして、辺境伯様たちが帰る時にまたまた可愛らしい事件が起きました。
じー。
「うん?」
ヒョイ。
物陰から、ガイちゃんとブレアちゃんが帰路に着く辺境伯様たちを見ていました。
しかし、西の辺境伯様が二つの小さな視線に気がつくと、その二つの視線はすぐに物陰に隠れてしまいました。
しかも、二頭の赤ちゃんオオカミまで二人のマネをしていました。
苦笑いをしているベリアさんが直ぐ側にいるので、辺境伯様たちは何があったのか直ぐに理解したみたいです。
すると、ここで大人気ない行動をとる人がいました。
「うらぁ!」
「「うわーん」」
「「キャンキャン、キャンキャン!」」
あーあ、西の辺境伯様が悪人面で脅かすから、ガイちゃんとブレアちゃんはベリアさんに抱きついて大泣きしちゃいました。
赤ちゃんオオカミ二頭も大声で吠えているし、なんというか大人気ない行動ですね。
ズゴゴゴゴ。
「あの……」
「大変申し訳ありませんでした」
そして、表面上は笑顔だけど超激怒しているベリアさんに、西の辺境伯様は綺麗な土下座をしていました。
本人としては単に脅かしたつもりだけど、これではいつまで経っても小さな子に好かれないよね。
僕もスーも、大人気ない西の辺境伯様にかなり呆れちゃいました。




