散歩の千十二話 事件の経過報告
シャーリーさんが教会で働く時は、必ず複数人で動くことになりました。
そして、うちの馬がシャーリーさんの護衛につきます。
「ブルル」
「あっ、ありがとう……」
うちの馬は普通に教会の仕事を手伝っていて、シャーリーさんはかなりびっくりしていました。
とはいえ、他の聖職者の邪魔はしないしかなり大人しくしているから問題は起きていないそうです。
そして、僕は王太子様の執務室での報告事項にかなり頭を悩ませていました。
「ウラガネ司祭は、手下を使ってパン工房の窯を使用不可能にし、更にお金を払うなら修理をすると言おうとしたのですね。人の心を弄ぶのは得意そうですね」
「全く、馬鹿げているにも程がある。ウラガネ司祭は、別の聖職者への買収工作をしてゲス枢機卿への処分軽減をしようとしていた。あの手この手を使って動いていたみたいだが、全て水の泡になったわけだ」
ヘーベル枢機卿は、王太子執務室にやってきて調査の中間報告をしてきました。
ウラガネ司祭は、あくどい事にはかなり頭が回るみたいですね。
報告を聞いた王太子様も、かなり呆れた表情を見せていました。
「あの程度の工作で、物事が上手くいくと思っていたのだろう。考えが浅いにも程がある。何にせよ、ゲス枢機卿がまだ何かをしてくる可能性はある。引き続き、気を引き締めるように」
「「はっ」」
僕とヘーベル枢機卿は、王太子様に返事をします。
何にせよ、今は相手の出方を見つつこちらの守りを固めるようにしないといけませんね。
そんな中、王太子様の通信用魔導具にある連絡が入りました。
ヘーベル枢機卿のところにも、同じ報告が入ったようです。
「ふむ、シュンのところの馬が教会内にいる問題のある聖職者十人を捕まえたらしい。まあ、あの馬ならやりかねんな」
「信じられん。馬が不審なものを見つけるだなんて……」
王太子様とヘーベル枢機卿の反応は、全く正反対ですね。
うちの馬を知っている人にとっては、このくらい容易いことです。
ここに、シロとかが加わるととんでもない効果を発揮するんだよなあ。
ヘーベル枢機卿は、新たな仕事ができたと苦笑しながら大教会へ帰っていきました。
「シロたちによる町の巡回も強化しつつ、年末の炊き出しの準備をしないとなりませんね」
「昨年は人神教が明確な犯行宣言をしていたが、今年は今のところ特にない。しかし、何があっても良いように動かないとならない。最悪な事態を想定して動くものだ」
流石王太子様です。
油断も隙もない考えですね。
後は、本当に何もないことを祈るばかりです。




