散歩の千十話 項垂れ連行されたもの
「騎士団長、報告を」
「はっ。今朝方、王都内にあるパン工房のかまどにて故障が発生し、パンが作れないとの報告を受けております。調査した結果、かまどの一部が人為的に壊された形跡を確認しました。現在騎士団と軍の合同捜査本部にて調べており、かまどは仮復旧して使えるようになりました」
「報告ご苦労。なるほどね……」
王太子様が、顎に指を当てて思案してから鋭くウラガネ司祭を睨みつけました。
当のウラガネ司祭は汗だくで、この時点で何かが行われたと推測できます。
そして、今度はヘーベル枢機卿が通信用魔導具を取り出し、更に僕も通信用魔導具を取り出しました。
「ウラガネ司祭、貴様の話していた事は王国の重要人物に全て筒抜けだ。自分の組織を守るために、何とも情けないことをしたのか。どうやら、バレた時の影響の大きさを全く考えていなかったようだな」
「あっ、あぁ……」
ウラガネ司祭は、自分が偉そうに話をしていた事がこの国の上層部に伝わっていたと知って顔面蒼白になってしまいました。
完全に内政干渉だから、バレた時の影響度はとんでもないですね。
「既に、教皇猊下経由でゲス枢機卿に反逆罪に伴う厳罰を本国に申し伝えている。王国からも処罰を求める通告を出した。ウラガネ司祭、貴様にも厳しい取り調べが待っていると覚悟せよ」
ホルツ司祭の件もあるし、王国の教会としてもかなり厳しい態度で臨まなければなりません。
ましてや王女に危害を加えようとしたのです。
「反逆罪の現行犯に伴いウラガネ司祭を死刑囚牢屋へ、その他のものを重犯罪者用の牢屋へ入れるように」
「「「はっ」」」
王太子様の命令を受けた軍の兵が、項垂れて動けないウラガネ司祭以下を連行していきました。
そして、王太子様とヘーベル枢機卿はシャーリーさんに話しかけました。
「シャーリーがウラガネ司祭の話を伸ばしたお陰で、奴の目論見を正しく把握できた。大きな功績と言えよう」
「中々難しい場面ではあったが、重要な証拠を押さえることができた」
「あっ、ありがとうございます!」
王太子様もヘーベル枢機卿も、シャーリーさんの功績を高く評価していました。
しかし、そのゲス枢機卿も碌なことをしませんね。
あっ、そうだ。
「王太子様、シャーリーさんの屋敷の警備強化をすることを進言いたします。ゲス枢機卿がどんな事をしてくるのかまだ分かりませんので」
「シャーリーに逆恨みをする可能性もあるな。騎士団長に一任しよう」
ゲス枢機卿がどんな手を打つか分からないから、当面は警備を厳重にした方が良いでしょう。
うちも、馬が交互にホルツ男爵家に行くことになったし、先ずはこれで様子を見ることにしましょう。




