散歩の千九話 僕たちの前に現れた人たち
そして、更にとんでもない人たちがこの場に現れたのです。
ザッ、ザッ、ザッ。
多くの騎馬隊が僕たちの前に現れ、そして止まったのです。
そして、豪華な鎧を身にまとったこのお二方が騎馬から降りてきました。
「王国王太子殿下、並びに教会聖騎士団団長のご到着!」
「なっ!?」
誰が到着したかを告げるものの声を聞いて、ウラガネ司祭は顔を真っ青にしてしまいました。
裏でこっそりと事態を改善したかったウラガネ司祭にとって、間違いなくこの場で一番会いたくない人たちでしょう。
そして、小さな子どもはこういう時でも素直です。
「あっ、スーお姉ちゃんのお兄ちゃんだ! この人が、スーお姉ちゃんを突き飛ばしたんだよ」
「そうか、わざわざ教えてくれてありがとう」
「えへへー」
まだ小さいレンちゃんにとって、王太子様はスーのお兄ちゃんで一緒に勉強しているジェフちゃんのお父さんです。
しかも、王太子様から何かあったら遠慮なく教えてと言われています。
王太子様はニコリとしながらレンちゃんの頭を撫で、それから聖騎士団長とともに地面に組み伏せられているウラガネ司祭のことを睨みつけました。
「騎士団長、報告を」
「はっ。ウラガネ司祭は、馬車から降りるやいなや、ホルツ男爵へ半ば命令に近い話をしておりました。ホルツ男爵の前にスーザン殿下が出て説明しようとした瞬間に、激昂しながらスーザン殿下を突き飛ばしました。アオ殿がいて何も危害がないようにしておりましたが、スーザン殿下に危害を加えようとしたのは明白です」
「報告ご苦労。逆に、アオがいなければスーが怪我をしていた可能性があるということか」
スーに危害が及ばないように、実はスーの肩にアオが乗っていて念の為に魔法障壁も張っていました。
じゃなければ、スーが前に出たタイミングで僕かガンドフ様がスーの側に立っていたはずです。
そして、レンちゃんはもう一つのことも王太子様に報告していました。
「あっ、そういえばこの人が何でかパンがないことを知っていたんだよー」
「ふむふむ、確かに不思議だな」
張り切って報告をしたレンちゃんのことを、王太子様はまたもやニコリとしながら頭を撫でていました。
フランたちは、王太子様に頭を撫でてもらっているレンちゃんのことを少し羨ましく思っていました。
対して、地面に組み伏せられたままのウラガネ司祭は、「あっ」っと声をあげたかと思ったら大量の汗をかきはじめたのです。
どうやらウラガネ司祭は、三歳児のレンちゃんでも分かる事に気が付かない僕たちだと思っていたみたいですね。




