散歩の千八話 愚かなものの独演会
「ゲス枢機卿様を取り巻く環境は、日々悪化しております。特に、各国での資金の集め方に問題がありました。別に資金集め自体に問題はないのですがね」
ウラガネ司祭は、シャーリーさんが何も知らないと思って一から喋っているみたいです。
でも、シャーリーさんは全てを知っていると思うんだよなあ。
「事件の被害にあった貴方が、両親の罪は全て許すと、そしてゲス枢機卿様はとても素晴らしい人だと宣言すれば一気に情勢は変わるでしょう。もちろん、タダとは言いませんよ」
ウラガネ司祭は、両手を広げながら演説するように強調しながら喋っています。
でも、一般聴衆の前ならともかくとして、最初から怪しいと思って話を聞いている僕たちの前では意味ないと思いますよ。
というか、そのゲス枢機卿の支持基盤が崩壊寸前なのは自業自得だと思いますが……
「先ずは、資金提供をいたしましょう。罰金の支払いで、かなりの資産を押収されたとお聞きしております。お屋敷の経営も、かなり心苦しい状態でしょう。二つ目に、パンの提供をいたしましょう。パンのない炊き出しなど、炊き出しとは言えませんから」
なんでウラガネ司祭は、今日の炊き出しにパンがないことを知っているんだ?
ガンドフ様も、流石に目の色を変えました。
そして、決定的なことが起きてしまったのです。
ザッ。
「ウラガネ司祭様、元ホルツ子爵が捕まったのはシャーリーさんへの殺人未遂……」
「煩い、黙れ小娘! 俺はシャーリーと話をしているんだ!」
ドン!
なんと、シャーリーさんの前に歩み出たスーのことを、ウラガネ司祭が両手で押して突き飛ばそうとしたのです。
スーは最初から突き飛ばされるのを覚悟で前に出ていたから転ぶことはなかったけど、それでもあってはならないことです。
「確保! スーザン王女殿下への反逆罪の現行犯だ!」
「「「はっ」」」
「な、なんだなんだ!?」
ある意味このタイミングを待っていたかのように、ガンドフ様が捕縛命令を下しました。
一斉に兵がウラガネ司祭と取り巻きを取り押さえ、縄で縛り上げます。
あっという間の早業で、ウラガネ司祭たちは抵抗する間もありません。
では、ウラガネ司祭が突き飛ばした人がどんな人なのか、教えてあげましょう。
「ウラガネ司祭、こちらにおられる方は王国王女スーザン殿下にあらせられる。慈悲深くもあらせられ、本日は御自ら奉仕活動を教会と共に主催されておられる」
「はっ? えっ?」
僕がスーのことを恭しく説明すると、スーも王家の証を魔法袋から取り出した。
兵によって地面に組み伏せられている肝心のウラガネ司祭は、未だに何のことか理解していないみたいですね。




