散歩の千三話 処分言い渡しの謁見
「では、ホルツ子爵家に対する処分を言い渡す」
閣僚や有力貴族が集まっている中で、ホルツ子爵家への処分内容の発表が始まりました。
シャーリーさんは、陛下の前で膝をつきながら顔を上げています。
僕は、ガンドフ様の側に控えています。
陛下の宣言に合わせて、王太子様が一歩前に出た。
「それでは、ホルツ子爵家への処分を言い渡す。爵位を一つ降格し、男爵家とする。また、資産の七割の罰金の上で二十年にわたり一定の罰金を納めるように」
「仔細承知いたしました。この度は、大変申し訳ありませんでした」
シャーリーさんは、王太子様に頭を下げて恭しく返答した。
王太子妃様の言う通り、シャーリーさんという人材を確保する為に子爵家を取り潰さない処分となった。
罰金の分割払いを加えることで、他の貴族も納得するだろうということを狙っています。
因みに強制捜査の際に今回の罰金プラス数年分の分割払いに相当する金品を押収していて、シャーリーさんが今すぐに罰金を払う必要はありません。
「そして、シャーリーは成人まであと二年あるので、後見人としてヴィクトリー男爵家並びにヴィクトリー子爵家をつける」
「「畏まりました」」
僕とガンドフ様が後見人となり、特に騎士団長のガンドフ様の存在はとても大きいです。
教会もバックアップに付くはずだし、シャーリーさんを支える体制は整ったと言えましょう。
これでシャーリーさんのホルツ子爵家に対する処分は完了です。
僕たちは、謁見の間から再び控室に向かいました。
「表面上は、かなり厳しい処分とすると言えよう。実際には、殆どやることがない。更に、罰金も前倒しで支払うことが可能だ。国としては、実際に罰金を取ることが出来て帳簿上も何も問題ない」
陛下は、今回の対応の裏話を説明しました。
元々シャーリーさんは贅沢をしないし、使用人の数も減ったので固定費も抑えられます。
なので、シャーリーさんの助司祭の収入でも十分に対応できます。
まあ、それだけ捕まった司祭夫婦と嫡男が色々なものを溜め込んでいた結果でしょう。
何にせよ、これでシャーリーさんへの処罰は完了しました。
すると、陛下がこんなことを言ってきたのです。
「シャーリーには、貴族当主として来年スーの聖教皇国行きに随行してもらう。まあ、ある意味聖教皇国への牽制も含むがな」
主犯の枢機卿が引き起こした事件は、聖教皇国でも大きな衝撃を受けています。
シャーリーさんはある意味事件の被害者なので、聖教皇国に対してスーへの配慮を求めることにもなるかもしれませんね。




