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4-28 往復(sideリュー)

本日3話目の投稿です。

「もう!!無理するんじゃないの!!」


「……無理しなきゃルディに逃げられてた」


「それはそれ!これはこれよ!」


ルディはプンプン怒りながらも丁寧に傷口に薬を塗っている。


確かにちょっと辛いなとは思ってたんだけど。

うっかり顔に出てたみたいで怒られた。

見るとだいぶ血が滲んでた……というか、出ていた。

医者を振り切って城を飛び出してきただけのことはある。


オルネリア国王とカルバディス卿と話をまとめ、諸々の体制をマティと整え終えた朝の事を思い出す。

会いに行ける段階になり、ルディの場所を必死で辿った。

すごいスピードで移動していた。

まずい、と思った。

ルディは逃げるのが得意だ。

手当の時間だとやって来た医者が大慌てで止めたが、振り切って……というか。

荷物を掴んで窓からそのまま飛び出した。


着地した衝撃が思ったより傷に響いて脇腹を押さえる。


「かっこわる」


「……なんだよ」


タナトスが残念なものを見るような目で立っていた。

横にはタナトスの愛馬だ。


「馬乗れるの?その傷で。」


「……乗る」


「ふうん」


タナトスはポンポンと自分の愛馬を撫でた。


「……ちゃんと返せよ」


「いいの?」


「いいから、さっさと連れ帰れ。このへっぽこ」


昔の口の悪さが復活していくタナトスに見送られて街を飛び出す。

砂漠まで馬で行き、魔道具のボートに乗り換えて突っ切る。

真っ暗になった頃、砂漠の端の拠点に着いた。

拠点でまた馬に乗り換えて国境へ向かう。


早くしないと。

ルディは絶対に、朝になったらどこかへ飛んでいくつもりだ。

今は予想通り、指輪は雨ノ森にある。


でも、もしかしたら。

明日には指輪のところに、ルディはいないかもしれない。


急がなきゃ。

国境の検問の近くで馬を飛び降りる。


「……っ」

勢いよく降りてしまって傷に響いた。


「おや、お兄さん大丈夫かい!?」


国境の検問付近でキャンプをしていたキャラバンの者たちに声をかけられた。


「……っリューカス殿下!?」


「工房の社長……」


芸術工芸祭で大きなからくり時計を展示していた大型工房の社長だ。

かっこ悪いところを見られて苦笑いする。

社長の後ろでは社員の者がびっくりした顔でこっちを見ている。


「建国祭で大怪我をなさったって…もう動いて大丈夫なんですか?」


「……多分、大丈夫かな」


あれだけ派手な事件だったのだから、もう国中に噂が広がってしまったんだろう。

心配させてしまって申し訳ない。

しかしなんでだろう。

妙に感極まってるように見える。


「……リューカス殿下!!!」


ザッと、工房の社員たちがサラディーニ式の敬礼をした。


「応援しております!!!」


「ありがとう……?」


そのまま謎の熱量を持つ工房の者たちに見送られ、国境を越えた。


真夜中のオルネリアを馬で走る。

空が明るくなってきた頃、やっと雨ノ森に着いた。

山を駆け上る。

まだぼんやり薄暗い森の中、家の前にラナトが立っていた。


『よく動けたね』


「ルディは?」


『……早く行ってあげて』


家の中に入った。

姿が見えないと思ったら。

キッチンの中にいたのか。

指輪のはまった手を握りしめるようにしてうずくまっている。


ほら、やっぱり。

びしょびしょになって泣いてる。


勝手の知った戸棚からタオルを出して、ルディに手渡す。

思わず受け取ったタオルから、恐る恐る顔を上げる泣きはらしたルディを見たら、もうダメだった。

ぎゅっと抱きしめる。

泣かせてごめん。

もう、絶対逃さないから。



そうやって、あの手この手でルディを囲い込んでいったんだけど。

何故か最後の最後で首を縦に振らない。

なんでだ。

もう俺の奥さんでいいでしょ。


包帯を丁寧に巻くルディを見る。


「新妻に手当をしてもらうのっていいよね」


「っまだ奥さんになってない!!」


「あれ、そうだったっけ」


「そっ……」


ぐいっと頭を引き寄せて口を塞ぐ。

とろけるように口付けると、あっという間にヘロヘロになった。

かわいい。


「……まだ足りなかった?」


「たり……ました……」


「さっきソファーの上でうんって言ってたよね?」


さっきはもっとヘロヘロにしてうんと言わせたんだけど。


「あれはズルいので無効です……」


「…………」


これだ。

何がダメなんだ。


はぁとため息をつく。


「……ルディがさ、建国祭のときに、国を出ていくって言ってリッキーにのって去ったって聞いて…そんな時なんで俺は寝てたんだって、本当に後悔したんだ。」


「………」


「またルディが俺に黙ってどこかに行っちゃうんじゃないかって怖いんだ。」


「………」


「だから、今結婚して」


「……リュー」


「なに?」


「そんな切なそうな雰囲気醸し出してるけど、実際は絶対に逃さないって闘志燃やしてたんでしょ?」


あっという間に見破られた。


「……なんで分かったの」


「貴方と付き合ってどれぐらい経つと思ってるの」


「約2ヶ月」


「短いわね……」


俺もそう思う。

もう1、2年は経ってる気がする。


ふぅ、と息を吐き出す。

そろそろ承諾がほしいけど。

ダメだろうか。


ルディを抱きしめて肩に頭を乗せる。

何が足りないんだろう。

このままじゃ、本当にルディがまた簡単に逃げていきそうで怖い。

確証がないんだ。

もう黙ってどこかに行かないで欲しい。


「そろそろ諦めて俺の奥さんになってよ」


「……だって。」


なんでそんなに抵抗するんだ。

まだ俺を信頼しきれてないのかな。

でも、これじゃあルディから離れられない。

黙って俺の知らないうちに逃げられるのはもう耐えられない。

そして俺の覚悟をわかって欲しい。


「……早く俺のになって」


抱きしめたルディに頭を寄せる。

だめだ、なんか、おかしくなりそうだ。

徹夜したから?

もっと、ちゃんと、ルディが欲しい。


「だって、こんな、流れで奥さんなんて……」


「……何が気になるの?」


「……ちょっと、区切りが欲しいというか……」


「区切り……?」


区切りとは?

今うんと言って首を縦に振り承諾するのが区切りなんじゃないの?


「その、宣言をしたくて……」


「宣言?」


なんだかルディがもじもじしている。


「……ちゃんと日にち決めて、ちょっとだけ素敵な服着て、結婚しますって、宣言する、みたいな……」


ルディが、素敵な服を着て、俺と結婚しますって宣言する?

想像してみた。

うん。

これは。

やばい。


「ほら、区切りって大事じゃない?お誕生日会だってあるんだし……だからさ、この日から夫婦になりますって決めて、心の準備しておきたいというか……」


つまり。

ルディが、俺の奥さんになる日の心の準備をしてその日を待つと。


「それにほら、この間あんなことになっちゃったじゃない?その……あんまり……カッコよくなったリュー見れなかったから……めちゃくちゃカッコよくなったリューに誓いを立てて……大事な日として、思い出にしたいなって……」


思い出にしたい?

俺の奥さんになる日を?

カッコよくした俺に誓いを立てたい?


ほんのりルディが赤くなってる。

待て。ちょっと。

顔を覆う。


「リュー??」


信じられない。

そんなの、拒否の理由があるか。


「ふふ、どうしたの?」


「それ、ダメって言えないだろ……」


俺を殺す気か。


「……わかった、やろう、結婚式」


そうだ。

結婚式。

全く憧れもなく興味も無かったから完全に忘れていた。

危うく一生に一度の機会を逃すところだった。


「あれだよ!二人だけとかでいいからね!!ちょっとおしゃれするぐらいでいいからね!!」


「いや、もうちょっと良く考えよう。区切りだよね。うん。本当に大切なことだった。ルディの花嫁姿を見逃すとか大罪だった。ありがとうルディ。」


「ど……どういたしまして……」


なんだか絶妙な顔をしている気がするけど、この顔は多分大したことないやつだ。

少なくとも俺の奥さんにはなってくれる気はあるみたいだし。

いったん安心していいかな。


息を吐き出す。

少し気持ちが落ち着かせ、立ち上がる。


「……どうしたの?」


「……一回城に帰る」


ルディがきょとんとした顔をしている。

本当は離れたくないけど。

でも。


不思議そうな顔のルディの頭を撫でる。


「……ルディは、ここにいる?」


「えぇと、そうだね……?」


「……逃げない?」


「ふふ、逃げないよ」


一応聞いてみた。

少し不安だけど……多分、大丈夫だろう。

俺の奥さんにはできなかったけど、結婚の約束までしたんだから。

万が一逃げたら、結婚詐欺として国を挙げて追いかけよう。


ポンポンと名残惜しげにルディの頭を叩く。


「……じゃあ、行くね」


「っ、待って!どうやって帰るの!?」


「……馬」


「また傷開くじゃない!!」


言われると思った。

でも、これは譲れない。

帰ると決めたら、帰る時も最速だ。


「なんでそんな無茶を……って、私のせいか。」


ルディが頭を抱えてる。

自分で自分につっこむルディが面白い。


「せめて、もうちょい休んでから帰れないの?徹夜したんじゃないの?」


「……まぁ、そうだね」


通常モードに戻ってきたルディは鋭い。

この分だとあっという間に気づいてしまいそうだ。


案の定、ルディがはっとして俺を見る。

あまり、気を遣わせたくなかったけど。

今日は、建国祭から3日目。

父上を目覚めさせてから、10日目だ。


「……っまだ、意識はあるの!?」


「………多分」


「ばか!早く行かなきゃ!!!」


ルディが即座に立ち上がり、バタンと裏庭へ通じる扉を開ける。


「……っルディ待って!!」


『リッキー!!』


ルディは俺が止めるのも聞かず、ちょうどよくまとまっていた荷物をひっ揉むと、精霊術を使った。


「リッキー!私とリューを乗せて、サラディーニ城まで全速力!!!」


リッキーはふわりと俺たちを背に乗せると、あっという間に空へ駆け上がった。


『キュ!キュー!!!』


なんだかプンプン怒ってるラナトがリッキーにまたがるルディのお腹の前に転移してきた。

口には鍵。


「もしや、戸締まりしてくれたの?」


『キュッ!!』


「頼れる弟!!!」


『キューーー!!』


さすがに人を三人は乗せられないのか、ラナトはキューのままなにか叫んでる。

なんだか面白い。

そして……ルディは、大丈夫だろうか。


「ルディ、身体は……?」


「サラディーニ城までなら、多分大丈夫!」


「……ごめん、無理しないで」


「ダメよ、これは無理してでも行かないと!!」


自分のせいで、2度とお父さんと話せなくなったらどうしよう。

そんな風に思っていそうだ。


むしろ、2度と目覚めないと思っていた父親が目覚め、会話ができたんだ。

それだけで奇跡だったのに。


俺が諦めようと、流石に無理だろうと思った時に限って、ルディは諦めない。

俺のこと、何度助けるつもりなんだろう。

俺を甘やかし過ぎなんじゃないのか。


前に乗るルディの頭に、コツンと頭をくっつける。


「……惚れた女を泣かせたままのやつには親の死に目には会わせてやらんって、面会謝絶されたんだ」


「なんてこと!!!」


リッキーがビュンビュン進んていく。

国境をあっという間に超えていく。


「……無理させてごめん」


「何言ってるのよ!」


ルディは振り向いて、少しいたずらっぽく笑った。


「だって、私のお義父さんになる人なんでしょ?」


「……うん」


思ってたよりちゃんと考えてくれてたみたいで安心する。


やっと少し、自分に繋ぎ止められたような気がしてきた。

はぁと息を吐いて、ルディを後ろから支えるように抱きしめる。


「大丈夫、ちゃんと間に合うよ。ねぇキュー?」


『キュッ!』


「ほらね」


「えっルディいまので分かったの?」


「なんとなく……?」


『キュッ!キューー!!』


「今のは……?」


「………わかんない」


『キューーーー!!!』


なんだか怒っているキューをみてルディと笑う。


真昼の砂漠の上。


ちゃんと腕の中に帰ってきたルディを連れて、再びサラディーニ城へ。


きっとみんな、ルディを待っている。


読んで頂いてありがとうございます。


いいねいつもありがとうございます!!

とても嬉しいです!


リューさん暴走気味です。

「スレイド様間に合って!!」「実は私ちょっとタナトス好きかも……」と思ってくれた方、

ぜひブックマーク、☆下の5つ星☆から☆いくつでもいいので応援よろしくお願いします☆彡

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