2-8 月夜の街
大図書館を出た後は、親睦を深めるぐらい良かろうと個室の豪華なレストランへ連れて行かれた。
やたら豪華なご飯を頂き(お肉がめっちゃ美味しかった)
根掘り葉掘りおばあちゃんのことを聞かれ(自分に都合の悪い恥ずかしいところは割愛)
祖父母と両親は兼任だと解かれ(よくわからない)
何だかワイワイ楽しい時を過ごした。
カルバディス卿はお酒も入って上機嫌となり、最後には「また会おうルディ」と紳士のハグをして去っていった。
上品でスマートで怒涛のような人だった。
「さすが…おばあちゃんの夫になりかけた人よね…」
カルバディス卿が馬車で去った後の道は、妙にしん、とした感じがした。
点々とオレンジの灯りがつく街道には人通りも少なく、暗い空では月が流れる雲の間を出たり入ったりしている。
「でも、解呪の方針も立ったし、結果オーライかしら?なんだか朝馬に乗ったのが遥か昔に感じー」
一瞬何が起こったか分からなかった。
リューの頭が自分の肩の上にある。
リューの腕で包み込まれてる。
「…大物釣り過ぎ」
「おお…もの…」
リューの頭が私の肩の上で、すり、と動く。
なんだか甘いようなよくわからないリューの香りに包まれる。
自由な自分の手が行き場を失ってプルプルしているのがわかる。
「あの…」
「連れてかれるかと思った」
その言葉にきょとんとする。
「ついさっきまで、さっさと東の国へ行けとか怒ってたのに?」
「…もう言わない」
リューが子供のようになっている。
なんだかおかしくなってクスクス笑ってしまった。
リューの背中をぽふぽふ叩く。
「ふふ、大丈夫だよ、あんだけ啖呵切ったのよ!何が何でもリューについてくわ。」
「あんな好条件、あの人についてくのが普通だ。」
「そうかなぁ。」
拗ねてるんだろうか。
ぎゅーっとしがみつくようなリューが妙に可愛く思える。
「私はいつリューに東の国へ行けって言われるかなって、そっちのほうがハラハラしたよ。」
サラサラの髪の毛が気持ちいい。
優しい気持ちになる。
「だから、私とならできるって言ってくれたの、嬉しかったなぁ。」
「……ルディ」
「はいはい」
「背中叩くんじゃなくて、普通にぎゅってして」
「ん?こう?」
「…うん」
流れで背中をぽふぽふしていた手を止める。
「………」
やってしまった。
これは、明らかに抱き合う恋人たち。
「えっと…その…」
「お願い。」
リューがもっとぎゅっと腕に力を入れる。
「嫌じゃ無かったら、黙って抱かれてて。」
「…っ」
見た目より、しっかりした腕や胸元の感触にどきりとする。
耳元で息遣いが聞こえる。
「ルディ」
「っはい」
「俺の名前も呼んで」
柔かい声に揺さぶられたような心地がする。
「な、まえ…?」
「リューって呼んで。」
「リ、リュー…」
「もっと」
「…リュー」
「…うん」
するっとリューの頭が持ち上がると、コンっと額同士がくっついた。
ふわふわするし、クラクラする。
酔ったようにうまく頭が回らない。
するりとリューの手が頬を撫でる。
「…ル「ヒュー!お熱いな兄ちゃんたちー!」「若いっていいねぇー!」「俺だって若い頃はヒィィック!」
凄いタイミングで酔っ払いが通り過ぎて行った。
リューがゆらりと身体を離して酔っぱらいの背中に向き直る。
手から青い炎が出てきた。
いかん、青い炎は高温だ。
「リュー!!ちょっと!!!」
「大丈夫、跡形もなく消す」
「大丈夫じゃないから!!!」
「サラディーニでは正当防衛として殺ってもいいことになっている」
「ここオルネリアだから!!!」
背中に必死でしがみつく。
「いやー!優しい男の人って素敵だなー!!そういえば疲れたなー!!早くお宿に連れてって欲しいなー!」
「……」
「ほら、ね?一応ここは街道だし。ね?」
ぽふ、と火が消える。
「…反対側向きたい」
私は今リューの背中にしがみついてる。
リューが反対側を向くとさっきと同じだ。
「そ、それはだめ!!!」
「なんで?嫌なの?」
「その聞き方ズルい!!!」
私はぎゅーっとリューの背中にしがみついた。
「と、とにかく!!今は!!私は!!リューの背中を堪能してるからダメ!!!」
沈黙。
…リューの背中が震えている。
クククっと笑い声が聞こえる。
「背中を、堪能って、なに…!」
「い、いいでしょ!!」
「良い、けど、待って、お腹痛い」
「う〜〜〜」
どうしていいか分からないまま、私はそのままリューの背中を堪能した。
この先どんな結論が出るのか、分からないまま。
ちなみにサラディーニでも正当防衛にはなりません(笑)
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