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「はい。」
もう一度挙手する。
「はい、レタアさんどうぞ。」
「魔術師団の方に聞きます。魔物の凶暴性、また、魔力量。これらを調べるために使った方法は何ですか。」
魔法関連ならワシも調査に加われるからな! 一応聞いておこう。
「凶暴性は遥か昔からある『打撃を測る魔導具』を使い、魔力量は魔法学校にある『感知魔法を埋め込んだ魔導具』を持ち運んで調べます。」
……めんどくさっ! 前者はともかく、後者の魔法学校にあるあの魔導具って相当大きかったはず。あれを持ち運んだのか。大変じゃな。三、四人がかりであれを持ち運んでいる様子を想像して、内心笑ってしまった。
「ふふっ……ご、ゴホン、後者は普通に感知魔法を使えば良いのでは? わざわざ魔導具に拘る理由は?」
「あの……レタアさん、でしたね。」
「はい。」
「あれはかの有名なラールル氏が作った複雑過ぎる魔法の一つ。再現出来る人間などいません。」
うわ……そりゃあいろんな意味で大変じゃな。
「なら……魔導具の軽量化、または量産化は?」
「無理です。王都にいる腕利きの魔道具師達ですら再現不可能なんです。」
「ふぅむ……」
ここでワシが『じゃあワシがその魔法を使って測るの協力する!』だなんて言った日にはきっと、また、ラールルの二の舞になってしま……
そんな想像をしてゾッと背筋を震わせる。あんな生活に戻るくらいなら黙っていた方が……
「あのアーニャイーニャ姉妹ならもしかしたら可能だったかもしれないのに……」
ポソリと魔術師団の人が呟いた言葉の中に、見知った人の名前が出てきた気がした。気のせいか?
「ん? イーニャお婆ちゃん? が、どうしたんじゃ……ですか?」
「いや、いいんです。」
「良いか悪いかはともかく、取り敢えず話してみてください。」
アーニャイーニャ姉妹、というのがイーニャお婆ちゃんのことであるのならば、ワシにも何か出来るのではないか。そう考えつくのも不思議ではなかろう。
魔術師団の人は右に左に視線を彷徨わせた後、キリッと顔を引き締めた。話す決意みたいなものを得たのじゃろうか。
「……百年以上前、魔法学校に通っていた天才双子姉妹、アーニャとイーニャ。魔法の才能はもちろん、魔導具作りにおいて右に出るものはいない程の才能があったのです。……いや、アーニャイーニャ姉妹の右に出るとすれば、かの有名なラールル氏のみ。この世界で今生きる人間の中では最強です。」
ほー、その姉妹は相当凄いのじゃな。
「しかし、アーニャイーニャ姉妹は学園を卒業後、王都に留まることなく行方をくらませました。」
「ほぅ?」
「何事もなければお二人はまだ生きていらっしゃるはずなのですが、今どこにいらっしゃるのか……誰も分かっていません。」
そう言って魔術師団の人は目に影を落とした。




