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イーニャお婆ちゃんの元へ行く道すがら、人の様子や魔物の有無を確認しながら歩く。
「今のところは平和じゃな。」
「っすね。」
ぽてぽてと街の中を歩き、少ししたところでイーニャお婆ちゃんのお店『アーニャ婆さんの魔道具屋』がある。未だに名前がイーニャなのに何故店名がアーニャなのか怖くて聞けていないのじゃが、いつかは聞いてみたいもんじゃな。
「イーニャお婆ちゃーん。ワシじゃー。」
カランカランと音を鳴らして開いた扉。うむ、ここはいつ来ても変わらず薄暗いな。
「なんだね。」
これまたいつも通りニュッと出てくるイーニャお婆ちゃん。さすがにそれにはもう慣れたからな、驚くことはない。
「ちょっと意見を聞いてみたくてな。」
「ふん、わえにか?」
「ああ。年長者の意見も聞いてみたかったんじゃよ。」
「ふむ……で、なんだい?」
お、話は聞いてくれるらしい。なんだかんだ言ってイーニャお婆ちゃんは優しいんじゃよな。
「最近、魔物が活発化していると思わんか? 街にも頻繁に入ってきたり、街の外に出れば今まで以上に遭遇する。」
「ふむ……そうだねぇ……」
イーニャお婆ちゃんはそう言って黙り込んだ。その間、ワシも考えてみることにした。
まず魔物を誰かが操っているとしたら。……いや、それはほぼ不可能じゃろう。何度も言うが精神に干渉する魔法は存在しない、というか作り出せなかったのじゃ。このワシがじゃ。
そしてこのワシでさえ成し得なかったことを、現代に生きる人間なら再現可能なのじゃろうか……ふーむ……
仮にそれが完成していたとして、そんな魔法はきっと消費する魔力量も半端なく大きなものとなるだろう。ワシならもしかしたら扱えるやもしれんが、魔力持ちが減った現代、更に言えば昔と変わらず魔力量も多くない人間に扱えるものなのか。ふーむ……
「イーニャお婆ちゃん。質問ばかりで悪いが、もう一ついいか?」
「なんだね。」
「精神に干渉する魔道具なんてものはあるのか? それか魔力量を大幅に増大させる魔道具とか。」
パッと思いつくものを取り敢えず挙げていったのじゃが、イーニャお婆ちゃんはワシのその質問を聞いて呆れた顔をした。




