6 ミネルヴァside
「今のミネルはレベル二も扱えそうな所まで来ている。だからそうなるようにワシが教えることも可能じゃが、しかしそうすると前世のワシの二の舞にならないかと心配で……な。」
そう言ってフッと顔を曇らせるレタアちゃん。
私が周りより飛び抜けて魔法が操れるようになったら他人の目を気にして森に引きこもるのではないかと心配しているようだ。そんなこと無いのに。
確かに巨大な力は時として恐れられる対象になり得るが、それ以上に利益となるはず。
だからこそレタアちゃんから教わったことを全て自分の力に出来るようにして、この世界にとってかけがえのない存在となれるように努力しているのだが。
この二年間で、教科書で学んだラールルさんと実際のラールルさんの相違や本人の本当の想いを知った。レタアちゃんは本当は人が好きで積極的に関わりたいのに、魔法の天才だからと鼻にかけて森に引きこもっていると勘違いされて……そして魔法の天才なんだからと魔法の開発を任されていた。
まあ、本人は魔法に関わることが出来るから良いやと気にしていないようだったけど、どう聞いてもレタアちゃんが話す記憶の数々は前世の社畜を連想させるものばかりだった。
それをうん百年も続けていただなんて……
「レタアちゃん、私は……」
私が口を開くとレタアちゃんは顔を強張らせる。それを吹き飛ばすように笑顔を作ってキッパリ発言する。
「レベル二になりたい! というかレタアちゃんと同じレベルを目指してるんだけど……駄目?」
上目遣いで必死のアピールをする。まあ、多分効いてないだろうけど。レタアちゃんはそういうのすごく鈍いからね。
「……良いのか?」
私がここまで言ってもレタアちゃんは不安そうだ。
「もちろん!」
「……確かにこの成長速度ならレベル三も夢ではない。だが……」
「ねぇ、レタアちゃん。」
「……ん?」
「私がもしレベル三になったらさ、きっとその頃には魔力量もぐっと増えてると思う。さすがにレタアちゃん程ではないかもしれないけど、そうなったら今よりも長い間レタアちゃんと一緒にいられるよね?」
レタアちゃんは孤独を嫌う。それはこの二年間で嫌という程理解させられた。前世で孤独に死んでいったからこそ、今世は人と関わろうと奮闘している。それが必死すぎて、少しだけ痛々しくも見えてしまう程。
レタアちゃんの基準で見れば人間はすぐ死ぬという認識になるのは分かる。だからこそ生きているうちにたくさん話そうとしているような気もする。
そんなレタアちゃんを一人にしたくない。そう思った。
私の魔力量が増えて寿命が伸びれば、レタアちゃんを一人にする時間が少しだけ減る。だから魔力量をどんどん増やせるように、魔法の練習は毎日欠かさずしているんだよ。レタアちゃん、気付いてないよね?
「……だが、ミネル……長く生きるのはそんなに良いものでもないぞ?」
ほらまたそんな悲しそうな顔して。そんな顔をして欲しくないからこそ長生きするって言ってんのに、レタアちゃんは全然分かってない。




