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ミネルはとても驚いた様子じゃったが、ワシはそれを気にせずに話を続けることにした。
「ミネルが参考にしたのは『架空の物語』なのじゃろう? じゃがこの世界では魔法は『現実』じゃ。」
「う、うん……」
「いいか、ミネル。この世界での体内の魔力は『巡るもの』ではない。『溜まる』ものじゃ。」
「溜まる……?」
「そう。体内の魔力は全身に満ち満ちているのじゃ。それの濃度が高いか低いかで魔力量は変わる。」
「成る程……」
「で、十までに魔法を使いまくればその濃度が高くなり、魔力量は増えて、結果的に寿命も少しばかり伸びる。」
「ほぉ……」
「ほれ、その意識で魔力を感じてごらん。もう一度魔力を当ててやろうか?」
「お、お願いします。」
先程と同じように魔力をミネルに向かって投げる。ミネルは目を閉じて感じ取ろうと奮闘する。その間にワシは色々考えていた。
この世界に生きる魔力持ちは皆先入観も何もなく魔力は溜まるもの、と知っている。だからこそそんな初歩的なことをミネルは誰からも教えられなかったのじゃろう。
前世の記憶が影響していたとは、ミネルの前の魔法教師も思わんじゃろうからな。まあ、これは誰が悪いとかは無いな。むしろ状況を把握出来るワシだから聞けたことなのじゃろうな。
「……あ、これだ! 確かに薄っすらと感じるかも!」
「お、すぐ見つかったか。」
コツが掴めれば早い。これはもしかしたら教え甲斐があるかもしれんな。少しこれからが楽しみになってきた。
「成る程、これかぁ……何で気付かなかったかな……」
「まあ、知らなければいつまでも分からないもんじゃからな。……じゃあ魔力感知が出来たなら、今度はそれを掌に集めるイメージを持って、ワシがやったように魔力だけを抽出する訓練をしよう。」
「はいっ! レタア先生!」
ミネルは元気な返事をする。うむ、その意気じゃな!
結果から言おう。ミネルはコツを掴んでからの成長が途轍もなく早かった。魔力だけを抽出する訓練もすんなり出来たし、後はもう魔法へ変換するという所まで来た。
「ミネル、なかなか筋がいいな。」
「そう? やったぁー!」
これなら今後魔法を使いまくればもっともっと魔力は増えるし、良い魔法使いになる。ミネルの成長、実に楽しみじゃ。
「じゃあ次はな……」




