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「レタアちゃんは六歳児ってこの前言ってたよね?」
「ああ。今年で六歳じゃ。」
「それなら何故……魔法学校を卒業した証を持っているの? それにこの家は……?」
あー、アルタには言ってなかったっけか。まあ、アルタには話しても良いと思えるので、この際話してしまうか。
アルタとは出会ってまだ日が浅いが、悪いやつではないことは充分理解しているつもりじゃ。だから話しても良い。まあ、この話を信じるかどうかは分からんが。
「突飛な話でも良ければ話しても良いのじゃが。」
「全然良いよ。」
「そうか。じゃあ結論から言う。ワシには前世の記憶なるものが存在する。そして前世のワシはこの国で魔法学校にも通い、この家で暮らしていた。だから今六歳児でもこの(我が)家を好き勝手出来るし、魔法も自由自在に操れる。」
「……、……」
「身体年齢は六つじゃが、精神年齢は……千を超えるかの。」
詐欺だと言われなければ良いがな。なんたってアルタはこんなワシに好きだなんだと言う程じゃ。(精神年齢が)ババアだから嫌、だなんて言いかねな……いや、そう拒絶されるのは想像つかないが。だが万が一ということもあるからな。
ワシは『人が好き』という気持ちは分からんが、『アルタに嫌われたくない』とは思う。それが好きと同義なのか、それは分からんがな。
「そっ……か……」
アルタは今頭の中でワシが話した情報を噛み砕いているのじゃろう。それ以降しばらくの間黙り込んだ。ワシはその間アルタをじっと見つめながら同様に黙る。
「レタアちゃん、私からも良い?」
「ん? 良いぞ?」
今度はミネルが質問する。
「その……前世はラールルって……本当?」
「うむ!」
「ええっ!?」
ミネルの質問に肯定すると一際大きな声で叫ぶのはアルタじゃった。あ、それも言ってなかったか。衝撃オブ衝撃がアルタを襲う。
「じゃが、それを証明するものが無いんじゃよな……」
そう、前世がラールルであると証明するものがない。だから信じてもらえなくても仕方ないのじゃ。
「じゃあじゃあ、魔王と対等に渡り合えるって言うのは本当!?」
「魔王……?」
ミネルがキラキラ顔で聞いてきたが、はて、魔王魔王……誰じゃ? ほらまた記憶力の無さが出た。
うーんうーんと無い記憶力を辿ると、一人思い当たる人物を思い出した。
「魔王……あ、もしかしてあいつか?」
「魔王をあいつ扱い……」
「ワシの宿敵(笑)のことかもしれんな。名前は……ご、ご、ご……ゴルゴンゾーラ……じゃったかな?」
ワシが無い記憶力からやっと引っ張り出してきた名前を出すと、ミネルもアルタも吹き出した。解せぬ。




