29 ミネルヴァside
「それでレタアさん、その年なら魔法学校を卒業したと思うんだけど、その証を見せてもらえないかな? 一応お金のやり取りがあるからね。証明出来るかどうかで色々と変わってくるから……」
話し合いを続けていると、お父様は急にそんなことを言い出した。え、ちょっと待って、レタアちゃんは私と同じ年(に見えないけど六歳児だもん!)だから学校なんてまだ通っているわけないじゃん! どうする? どう切り抜ける? レタアちゃんも六歳児だと打ち明ける? ええと、ええと……
「分かりました。では時間を下さい。」
「どれくらい?」
「……十分くらい?」
「分かった。」
ええ!? レタアちゃんどうするつもり!? そもそも卒業の証って何!? 卒業証書!? あの円柱状の筒に入って開けるとポンッと音が鳴るあれ!? この世界にもあるの!?
と、私が混乱している間にレタアちゃんは立ち上がる。そして数秒悩んだ後、呪文を唱えた。
「生麦生米生クリーム!」
その瞬間レタアちゃんの服を掴んでいた私は一瞬の浮遊感の後、見知らぬ森の中にいた。そしてそんな森の中にポツンと家が一つだけあった。前世のテレビ番組に出れそうなポツンと感だね。
「ここどこ!?」
「ミネルぅ!?」
両者とも驚き慌てふためく。
「何故付いてきた!?」
「え、レタアちゃんの服を掴んでいただけなんだけど!?」
「うええ!?」
レタアちゃんの驚きように私も驚いちゃったよね。
「で、レタアちゃんはこんな森の奥に何の用で……?」
「ん? ここは前世のワシの家じゃ。……そうじゃ、ミネルも暇じゃろうから探し物手伝ってくれ。」
「いいよ。で、何を探すの?」
「学校を卒業した証、黒いローブと黒い帽子じゃ。」
「了解!」
私の返事に笑って頷いてくれたレタアちゃんは家の扉に手を当てる。するとポゥ……と淡く光り、ガチャンと音が鳴る。
「良かった。今世のワシでも開けられた。」
「それは?」
「ワシの魔力に反応して開く鍵じゃ。」
「ほぇー、便利だねぇ。」
魔法ってそんなことも出来るんだー。これなら泥棒も入れないね!
「ちと埃かぶってるじゃろうが我慢してくれ。今日は時間がないからの。」
「はーい。」
その家はこじんまりとしていて落ち着く。私、狭い所の方が好きなんだよね。だからここはとても居心地がいい。埃っぽいけど。
私はレタアちゃんと共に家の中を探し回る。
「あ、そういえば少し前に歴史の授業で習ったな。森の奥に一人で住む魔法の天才……」
「む、それはラールルとかいう名前ではないか?」
「そうそう! 森の奥に引き篭もる偏屈な天才って……」
「ならそれはワシのことじゃな。」
……? 私の頭はカチンと動きを止める。あれー、レタアちゃん今なんて言ったー?
「ワシの前世はそのラールルとかいう偏屈なババァじゃな。」
「……え、ええぇえ!?」
今世一番の驚きだった。まさか歴史の教科書に出てくる人が目の前にいるなんて(転生したものだとしても)!
驚きすぎて叫んじゃったよね! 喉痛いや。




