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右からマル、ワシ、ミネル、アルタと並んで歩く。ミネルがその小さな体でちょこちょこ歩くのを見たワシらの間にほのぼのとした空気が出来上がった。実に平和である。
「ミネルちゃん、だったよな。」
「はい!」
「そのー、飴ちゃんいるか?」
「わあ! いいんですか!? ありがとうございます!」
ミネルと仲良くなろうとしたらしい。マルがミネルに飴ちゃんを渡す。お、それはさっきワシも食べたやつじゃから味の保証はしよう! 実に美味かったからな。うむうむ。
渡された飴ちゃんをミネルはもぐもぐと舐め始める。その瞬間ほわりと顔が緩んだ。うむ、その顔も可愛いな。
「……あ、そうじゃミネル。」
「ん?」
飴ちゃんを堪能している所悪いが確認しておきたいことがある。
「マルとアルタが付いてきているが、大丈夫か?」
名前ですらワシらに隠そうとしていたからの、家の場所を知られたくないものだと思っていたのじゃが……。今更な部分もあるが、一応配慮みたいなのは必要かと思っての質問なのじゃ。
ミネルはワシの言葉を聞いて、何を問われているか察したような顔をした。
「んー……カラコロカラコロ」
「ん?」
「カラコロカラコロ……カラコロカラコロ」
「ああ、悪い。飴ちゃん舐めてるから喋れないか。」
それもミネルはまだ小さな子じゃからな、口の中も小さくて喋る余力が無いのじゃろう。
「じゃあミネル、二人が付いてきても良いか? 良いなら首を縦に、駄目なら横に振ってくれ。」
ミネルは少し考えてから、首を縦に振った。
「カラコロカラコロカラコロ……」
「喋るのは後でもいいからな。」
そう言ってミネルの頭を撫でると、ミネルは嬉しそうに目を細めた。
「ここでふ!」
幾分か飴ちゃんが小さくなったらしい。何とか聞き取れるくらいになった。
そんなミネルが指差したのは……
「でっか……」
ついこの前までワシが住んでいたような大きなお屋敷じゃった。もしかしなくてもミネルは貴族なのだろうことが理解できた。
多分アルタとマルもそれを理解したのだろう、顔が引き締まったのがここからでも見えたのだった。




