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思ったことを素直に口にするとアルタは目が点になり、ぽかんと口も開ける。実に滑稽な表情じゃ。まあ、先程の計算され尽くした笑顔よりかは良い。
「アルタさん、ドンマイです。」
「マル……」
ぽんとマルはアルタの肩に手を置く。なんか慰めているかのようじゃった。……何がドンマイなんじゃ?
「きゃー! 引ったくりー!」
そんな風にほのぼのと道を歩いていると、女の人の叫び声が聞こえた。ふっと顔をそちらに向けると、道の向こうへと逃げていく犯人らしき人物を目で捉えた。その距離百メートル程。それを確認したワシは早速転移魔法を使う。
シュンと犯人(仮)の目の前に移動して立ち塞がり、女性ものの鞄を持った犯人(仮)を投げ飛ばす。
「ぐあっ!」
ダン、と地面に叩きつけるとその衝撃で犯人(仮)は目を回して気絶した。
さて、この鞄を返さねば、と思った辺りでタタタッと駆け寄ってきたのは先程声を荒げた女の人じゃった。
「この鞄はあなたのか?」
「そうです! この人に取られたんです! 取り返してくださりありがとうございます!」
「ん、いいんじゃよ。これがワシの仕事じゃからの。」
持ち主の元に戻ってきて良かったのぅ。よし、犯人も捕まえたし本部に戻って引き渡すとするか……
「レタアちゃん速いって!」
「俺の出る幕はなかったな……」
バタバタと今頃到着した二人。まあ、走ったらそうなるのか。
「ワシには魔法くらいしか取り柄がないからの、どんどん使っていかねば。」
「そんなこと無いと思うけどなぁ。」
アルタとそんな風に話しながら意識のない犯人を持ち上げ……
「うぐっ、」
さすがに六歳児にオッサンは持ち上げられなかったようじゃ。ぐぬぬ、鍛錬せねば。
「ああ、いいよいいよ。僕が持っていくからさ。」
横からアルタがヒョイっと軽々犯人を持ち上げる。おお、さすがじゃな。
「レタアちゃん、力持ちな僕に惚れたりは……」
「それは無いな。すごいとは思うが。」
「うーん、そっか。」
ガックリと項垂れるアルタ。いや、だって仕方なかろう? 人を好きになんてなったこと無いんじゃから!




