15
「そう、かい……」
それきりイーニャお婆ちゃんは黙り込んだ。まだ納得していない様子じゃったが、まあいいか。ワシはもう一度幻影魔法を自分に掛け、感知阻害魔法も掛ける。
その後に部屋に掛けた感知阻害魔法も解く。よし、これで元通り、と。
「じゃあミネル、さっき言ってた家を抜け出す日について話そうじゃないか。」
「うん!」
混乱している人達は放っておこう。その方が時間的効率にも良さそうじゃ。
「と言ってもワシは別にいつでもいいけどな。だがどうやって連絡を取れば良い? ワシからミネルに伝える手段は既にある。だが反対にミネルからワシへ伝える方法が無い。」
ワシからなら伝達魔法でチョチョイのチョイじゃ。そのワシの伝達魔法に返信する、なら出来るが、もしミネルの方から話し始めるとなると……どうすればいいじゃろうか。
ミネルに魔法を教えると先程言ったから、一番始めに伝達魔法を教える、というのでもいいかもしれんが、そうなるとミネルの出来具合によるからなぁ……
「なるほど、携帯みたいなのがあると良いのね。……婆ちゃん婆ちゃん、新しい魔道具の試作品作ってくれない? 案はあるからさー。」
「……。」
「ありゃ、まだ放心中かな。」
ミネルが魔道具の試作品をイーニャお婆ちゃんに頼もうとしたが、まだ放心中らしい。反応は無い。
「ミネル、完成度は低いじゃろうが材料があればワシでも作れないことは無いかもしれんが?」
「え、レタアちゃん魔道具も作れるの!?」
「前世での趣味じゃ。だからその程度のクオリティじゃがの。」
「すごいすごい! 婆ちゃーん、放心のままならレタアちゃんに魔道具作ってもらうけどいーの?」
「……はっ、それは駄目だね! 本職のわえを差し置いて趣味人に任せるなど!」
あ、イーニャお婆ちゃん、ようやく意識が戻ってきたみたいじゃな。ミネルの発案にやる気を出したイーニャお婆ちゃんはふんすふんすと鼻息荒くする。
「じゃあ婆ちゃんに頼もうかな? ええと、こんな感じのものなんだけど……」
「ふむふむ……」
話し込み始めたイーニャお婆ちゃんとミネル。ああ、ちょっと待ってくれ。
「あー、そこのお二人さん。話し込むようなら、そろそろワシらは仕事に戻ってもいいか?」
ワシとマルは仕事中だったことを思い出した。そろそろ街の巡回に戻らねばならんからな。
「ああ、そうだね。それならレタア、今日のお昼少し前にまた来てくれんかい? ミネルヴァが帰る時の護衛を頼みたいからね。」
「分かった。もし遅れそうなら連絡する。」
「ありがとうね。」
「レタアちゃん、よろしくお願いします!」
イーニャお婆ちゃんとミネルに頭を下げられる。
「ああ、じゃあまたお昼頃にな!」
バイバーイと手を振って店を出る。今度は追い出されなかったな。良かった良かった。




