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「さて、気分も晴れたところで、ずっとここにいるのもあれじゃから移動するか。マルとアルタも仕事を終えて戻ってきたようじゃし。」
向こうからマルとアルタが歩いてきているのが見えた。取り敢えず合流しよう。
「あ、う、うん!」
しかしワシの意見に少し言葉を詰まらせたミネル。……ああ、そうか。
「ミネルは何か用があってここにいたのか? もしあるならそれはどうしようか?」
いいところの嬢ちゃん(仮)がお供も連れずに歩いているんだ。何かしら秘密の用事があったのじゃろう。
「あ……じゃあ、一緒に来てもらってもいいでしょうか。また一人だと何言われるか……」
「ああ、いいぞ。ワシは街の警備が仕事じゃからの。」
「ありがとうございます。」
「む、同年なのじゃからタメ口で良いぞ?」
「わ、分かった。よろしく、レタアちゃん。」
「うむ! よろしくな、ミネル!」
ワシの返答にホッと笑顔を浮かべたミネル。今のやり取りで少し仲良くなれたミネルとワシは手を繋ぎ、マルとアルタの元へと向かう。すると二人は驚いたように目を見開いた。
「レタアちゃん、この子は?」
「さっきの輩に絡まれていた子じゃ。」
「ああ、そっかそっか。そっちはレタアちゃんが駆け寄ったみたいだったから安心してあいつらを取っ捕まえられたよ。」
「そうか。」
「アルタさんに仕事取られた……。」
ニッコニコ笑顔のアルタと、しょんぼりするマル。対照的な二人を交互に見るが、何故アルタがニコニコなのか、そしてマルが何故そこまで落ち込んでいるのかは分からなかった。
「あ、そうじゃ。ワシはこれからこの子を目的地に連れて行く。」
まあ、この二人のことは置いておいてもいいから先にミネルの用事を済ませねば。もしかしたら約束の時間を決めていたかもしれないからな。
「仕事の一環だろうから俺も付いて行こう。」
「僕も~。」
「……ずっと思っていたが、アルタは暇なのか?」
マルは仕事の一環じゃから良いとして、アルタはギルドの職員じゃろう? それなのに警備の仕事にまで参加するなんて……暇な人間なのか余程仕事がしたい人間なのか、ううむ、分からんところじゃな。
「うーん、愛しのレタアちゃんと少しでも一緒にいたいだけさ!」
キリッと決めポーズを取るアルタ。ふむ、そこまでワシを崖から落としたいのか。
「きゃっ、やっぱりそうなのね!」
よく分からんが今のやり取りを見たミネルがはしゃぎだした。むむむ? 今の何が面白かったというのじゃ?
「お、小さいのに察しのいい子なんだねぇ?」
「えへへ!(わあ、イケメンだ! 眼福眼福!)」
「僕はアルタだよ。お名前は? 年は?」
「私はミネルです! アルタさん、れでぃーに年を聞くのはタブーですよ!」
「ああ、ごめんごめん。そうだね。今のは聞かなかったことにしてもらえない?」
「いいですよぅ!」
……おお、アルタとミネルが意気投合しておる。ノリが一緒なのじゃろうか。ふむ、楽しそうじゃな。ワシも混ぜてくれんかのぅ……
「アルタさん、さっきの話もっと詳しく!」
「いいよ。じゃあねぇ……」
そう言いながら二人は歩き出した。
「レタアちゃんも行きましょか。」
「うむ、そうじゃな……」
マルに背中を押され、ワシとマルも二人に続いた。




