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「ぶふっ、」
これでアルタが焼けなくて済む、と安心しているとマルが吹き出した。その他の皆も顔を背けて肩を震わせて……もしや笑いを堪えているのか? しかし何か今のやり取りに面白いところはあったかのぅ? ワシは首を傾げる。そうしたことで何か分かったわけでも無かったが。
まあいいや。それよりもアルタに一応聞いておかねば。
「……アルタ。焼けずに済んだか?」
「う、うんまあねー。」
アルタはワシから目をそらし、さらに言えば棒読みじゃったが……ああ、寒いのか。まあ、最近暖かくなってきたとはいえ、ずぶ濡れになったら流石に寒いじゃろう。
「ならば乾かしてやろう。動くなよ。」
このままじゃと風邪を引くからの。アルタの表面に付いた水を、転移魔法を応用して(ベアを殺った時と同様なイメージで)ワシの手の中に集める。
「わお。一瞬で乾いたよ。」
「じゃろう?これで良し、と。」
パチン、と両手を合わせて集めた水を消した。この水も魔法で作り出したものじゃからの、消すことも可能じゃ。よし、これで良いな。
「魔力持ちってそんなことも出来るんすね。」
「すげぇ!」
「そ、そうかの?」
魔法を使って褒められたことは……多分無いからの、嬉しいもんじゃな。前世ではこの強大な力を見て恐れる人間しかいなかったから余計に嬉しいもんじゃ。えへへ、とだらしなく頬を緩める。もっと自慢したいところじゃな。うへへ。
「ご、ごほん。あー、盛り上がってるところ悪いけど、皆、仕事が始まるんじゃないかな?」
咳払いをして話に入ってきたアルタ。ああ、もう仕事の時間か。
「あ、そうっすね! じゃあレタアちゃん、一緒に回ろう! 飴ちゃん買ってやるよ!」
「よし、マル、早く行くぞ!」
「うっす!」
「待って待って、僕も付いてく!」
マルの背中を押して早く早くと急かすと、もれなくアルタも付いてきた。暇なのじゃろうか。
「んん~!」
他のオッサン達はワシを怖がったので、ワシを怖がらないマルとアルタの二人と共に街を見回る。
その最中に飴ちゃんを舐める。すると砂糖の甘さがダイレクトに口の中で広がっていく。うむ、甘々でうまうまじゃな! 頬がゆるゆるに緩んでいるのが自分でも分かった。
「レタアちゃんは食べ物では何が好きなんだ?」
「む? はいひんへはへははふひはは。」
「やっぱり飴ちゃん舐め終えてからでいいっすよ。」
「む!」
マルに質問されたが流石に伝わらんかった。飴ちゃんを舐めながら喋るのは駄目じゃな。うむ。
早く舐め終えようと飴ちゃんを口の中でコロコロと転がしながら辺りを見回す。
今日は街も平和なようじゃな。実に良いことじゃ。




