5 アルタside
「はっ!」
「なっ!」
僕達はレタアちゃんのその言葉に驚く。強いのは必然に迫られた故だ、という言葉に。
「そっか……そうだったのか……」
「このお嬢ちゃんも若いのに苦労してきたんだな……」
「そうだな。それなのに俺達は……なんてこった……」
こいつらもレタアちゃんのその言葉に思うところがあったのだろう。少し涙声だった。
「そうだね、僕も勘違いしていたのかも。」
この子はか弱さを捨てて強くなったのだ。それを他人が云々言えるものではない。
「お嬢ちゃん、俺達が悪かった! すまねぇ!」
「すまねぇ!」
そう言って僕の背後に隠れてた皆がレタアちゃんの元へわらわらと行って謝る。その変わり身の早さに僕は笑いを堪える。笑っちゃ駄目だ、笑っちゃ駄目だ。さっきのさっきまで怖がっていた対象に群がっていくんだもの。変わり身早すぎでしょ。見てて面白いけど。
あ、レタアちゃんはそんな皆にドン引きしていたよ。
「な、何をする気じゃ!」
「これから警備の仕事始まるが、俺達と一緒に回ろう! お菓子か何か奢ってあげるから!」
「なんじゃなんじゃ!? さっきまでワシのことを怖がっていたじゃろう!?」
「だからそれはすまねぇって! だから後で飴ちゃんあげるから!」
「飴、ちゃん……!」
「ぶふっ」
飴ちゃんに釣られるレタアちゃんは目をキラキラさせる。何それ、超ちょろくて可愛……
「いやいや!」
確かにこの子の見た目は可愛い。でもそれ以上でもそれ以下でもないと思っていた。それなのに……その仕草が、表情が、ちょろさが、可愛いと思ってしまった。
そんなこと一度も無かったというのに。今まで見た目が綺麗な女を相手に、テキトーに僕に惚れさせてバッサリ切る。そんな遊びを楽しんでいた。僕が誰かを好きになんてなりやしなかった。それなのに……
「くく、く……」
ああ、レタアちゃんが本気で欲しくなった。この手に留めておきたいと思った。知らない人にほいほいついて行こうとしているレタアちゃんを近くで守ってあげたくなった。
「これは……悪くないや。」
楽しみが一つ増えた。笑うように歪んだ口を手で覆い、湧き上がるワクワク感をも抑える。
僕に落とせなかった女はいないんだからね、すぐに僕に惚れさせるよ。その後も想像して一人で楽しむ。レタアちゃんは切り捨てたりはしない。この手に留めておくんだ。
「くくく……」
さて、そろそろ屈強なオッサン五人に囲まれて縮こまっているレタアちゃんを救出しに行こうか。まあ、レタアちゃん本人は楽しそうに目を輝かせているけれども。飴ちゃんの話をしているようだけれども。
「レタアちゃん、飴ちゃんなら僕が買ってあげるからこっちおいで。」
「む! 飴ちゃんならマルが買ってくれるって言ってたぞ!」
「そうっすよアルタさん! 俺が飴ちゃん買うって言ったっすよ!」
「えー?」
もうレタアちゃんと飴ちゃん発言をしたマルは特に仲良くなったらしい。
「妬ける、なあ……」
「む? 焼けるなら水で冷やしてやろうか?」
ほわ、と魔法で水を作り出すレタアちゃん。いやいや、それをぶっかけられたら服も全てびしょびしょになるでしょう!?
「いやいやいや! 大丈夫大丈夫! 水だけは勘弁!」
「む? 焼けてはいけないじゃろう?」
ビシャァァア!
そう言ってレタアちゃんは容赦なく僕に水を浴びせる。全身びしょ濡れになった僕は水の冷たさに体を震わせる。見ていた皆も笑いを堪えて肩を震わせていた。おい、そこ。後で覚えてろよ?




