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 よし、これで一人になれたのじゃ。新しい魔法を三歳児が作るなど前代未聞。絶対に隠さなければならないからの。


 色とりどりのクレヨンと紙の束がドンとテーブルに乗っている。一枚一枚バラバラになっているから何枚か減っていても気がつかんじゃろう。


 よし、カモフラージュとして二枚くらいは絵を描いておこう。ええと、ぐじゃぐじゃな自分の顔でも描いておくか。三歳児並みの絵とはどんなものかのぅ……


 よし、左手で描くか。利き手は右じゃからの。ええと……


 肌色で顔を丸くぐじゃぐじゃに塗って……緑色で目をぐるぐるに描いて……


「ぷあちなのくえよんは……ないのぅ。」


 ワシの髪は白金色なのじゃ。サラサラでふわっふわな白金色なのじゃ! 可愛いじゃろう?


 ……なぬ、自画自賛じゃと? 仕方なかろう。前世はサラッサラの黒髪で黒目じゃったからのぅ。違う色に憧れたものなのじゃ。


「うーん、いちばんちかいのはしおかのぅ……」


 白で顔の周りをぐちゃぐちゃに塗り潰す。よし、いい感じじゃな。


 あと一枚は……お花の絵でも描くかの。ぐるぐるにピンク色で塗り潰し、緑色で茎を描いて……


 よし、いいかの。三十秒クオリティーじゃが。






 そして三枚目から文字を書き始める。ええと、まずは何の魔法を作るかじゃが……


 感情をコントロールするものも開発せねばとは思ったが、それよりも喫緊で作らねばならない魔法があった。


 魔力の感知魔法を応用して、ワシの魔力を他人が認識しないようにしなければならない。出来損ないを演じるならば、知られる魔力は少ない方がいいじゃろうからの。


 このトラントという国で……前世のワシが生きていた頃の時代じゃが、十歳になると魔力を持つ人間は貴族平民問わず魔法学園に入らねばならなかった。


 もし今でもそうならば、学園に入る時に魔力測定なるものをしなければならないのじゃ。


 それで高い魔力を叩き出してしまったら前世の二の舞。それは防がなければ。


「えーと、かんちまほーをしゃかて(さかて)にとって……」


 魔力の感知魔法もワシが作った。じゃから応用もしやすい。サラサラと紙に術式を書き連ねていく。







 ぐぅー、と鳴ったお腹の音で集中が切れた。ふっと時計を見ると二時間は経っていた。


「はっ、もーしゅこしでごあん!」


 ユアが入ってくる可能性がある。十数枚になった術式の紙束を急いで整え、鍵が付いている机の引き出しに入れる。


 その上に前世のワシがよく使っていた鍵魔法で二重に鍵をかける。これで誰もここを開けることは出来ない……はずじゃ。


「レタアお嬢様、ユアです。」

「どうじょ!」

「失礼します。」


 危なかった。間一髪で術式の紙束はユアに見られなかった。ホッと一息つき、ユアの元へ。


「まあ! とてもお上手ですね!」


 ワシがテキトーに描いた二枚の絵を見たユアは褒めてくれた。ユアを騙しているようでほんの少し心苦しいが、まあ仕方がない。


「んふふー、そうでちょー!」


 子供らしさを前面に出してえっへんとドヤ顔する。


「ええ! この絵はレタアお嬢様ですよね? とても可愛らしいです!」


 テキトーに描いたやつではあるが、そこまで褒められると照れるのじゃ。頬がほんのり熱くなる。


「あ、そうです、そろそろお食事の時間ですので、」

「ん! おなかすいたー!」

「はい、参りましょう。皆様もそろそろお集まりになる頃だと思います。」

「はーい!」


 頭を使ったからの、体が糖分を特に求めているのじゃ。今日のご飯は何じゃろうな!

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