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次の日になった。今日から警備の仕事が始まる。気を引き締めていかんとじゃな。体調も万全じゃ!
「じゃあ、行ってくる!」
「レタアさん、行ってらっしゃい!」
オルコットに見送られ、ワシは意気揚々と宿屋を出る。今日は曇りじゃが、気分は晴れやかじゃ。初仕事、頑張るぞ!
集合場所に行くと、そこには厳ついオッサンばかりがいた。そして早速ワシは目を付けられたらしい。あちこちから睨まれておる。
まあ、アルタ曰くワシはか弱い十五歳の(見た目の)女子(笑)らしいからの。オッサン供は、か弱い(笑)ワシが来る場所ではない、と言いたいのじゃろう。
「か弱そうなお嬢ちゃんがここに何の用だ?」
ここは街の入り口。日中は色々な人が通るが、今はまだ朝早いこの時間にここに来る人間などまさに警備の仕事を任された者くらいじゃからの。か弱い(笑)ワシがいることに疑問を持ったのじゃろう。
「警備の仕事じゃ!」
えっへん! と胸を張る。ちゃんとハッキリ言わないと誤解されたりするからの!
「ぶっははは! こんなか弱そうな嬢ちゃんに警備の仕事が務まるとでも思ってんのかよ! なあ!」
オッサン供はゲラゲラと笑う。むむ、ワシ、認められていないじゃと?
「ワシはか弱くない! ちゃんと出来るぞ!」
魔法の天才の魔力量と技術を引き継いだんじゃ。それに宿敵(笑)と対等に渡り合えるように体術も少し……あ、でもレタアとなってから体術の練習とかしたことは無かったが……どうじゃろうか。問題なく動ければいいが。
「じゃあ俺と勝負だ! 俺に勝てたらこの仕事に加わってもいい!」
この中のボス的存在のオッサンにそう言われる。うわー、めんどくさ。
そんな思考が表情にも出ていたらしい。
「なんだその顔はぁ!」
余計に怒らせちゃったようじゃ。
しかしのぅ……宿敵(笑)とやり合う時、全力を尽くしてもあいつは死なないからいいが、このオッサンがあの宿敵(笑)よりも強いとは思えん。殺さない程度に加減するなど、ワシには無理じゃ。そんな器用さは無い。断言してもいい。
「勝負だ!」
そう言った瞬間にオッサンが拳をワシに向けて振るう。もー、短気じゃのぅ……。そんなことを考えながら右に避ける。ふむ。この速さなら動体視力を強化する魔法は使わなくてもいいかの。
オッサンの拳を右に左に避ける。
「おらおら逃げてばかりじゃ勝てねぇぞ!」
ふむ。どうするかの。魔法は使わんでもいいじゃろうか。




