27 アルタside
バタンと音を立てて閉まったギルドの扉。今レタアちゃんが出て行ったのだ。
「あーあ、逃げられちゃった。」
「自業自得じゃないの?」
姉さんのその問いに僕は答えずに思ったことをぽつりと呟く。
「それにしてもこの僕からの誘いを躱すだなんて……レタアちゃん、面白いよねぇ。」
にぃ、と口角を上げて笑う。ああいう子を僕に惚れさせてから振った時の絶望顔を見たいんだよなあ、とか考えながら。
今までは僕のこの綺麗な顔で落とせなかった子はいなかったんだもの。だからこの顔に靡かないレタアちゃんは落とし甲斐があると思ったのは本心だ。
ああ、明日から楽しみだなあ。
「うわ(レタアさん可哀想。アルタにロックオンされちゃって)。……というかアルタ、そんなこと続けてたらいつか刺されるよ?」
「いいよ? 別に。女の子から刺されるなんて本望。」
「うわ(我が弟ながら気持ち悪い)。」
姉さんにドン引きされても別に痛くも痒くもない。勝手にドン引いといて、って感じだ。
「さーて、明日はちょうど僕休みだし、レタアちゃんにアプローチしていかないとー。」
ぐっと背を伸ばして気持ちを新たにする。ひとまず目先の目標はレタアちゃんを僕に惚れさせて、それが出来たら振って……
「くく、く……」
「うわ(気持ち悪い)。」
ああ、レタアちゃんを振った時の表情を想像するだけで楽しいや。自然と笑みがこぼれるのも当たり前というやつだね。
早く明日にならないかなー。
レタアside
ギルドを出てきたワシは、明日からのことを考えてぶるりと体を震わせる。いや、明日は警備の仕事があるからアルタも来ないじゃろうが、それ以降じゃ。いつ崖から落とされるか分かったもんじゃない。怖い。
宿敵(笑)と対戦する時より怖いかもしれん。あやつの力量は理解しているからこそ怖くないというもの。じゃがアルタの力量など知らん。知らないからこそ怖いのじゃな。
ああ、日が昇るのが怖いだなんて、前世今世合わせても初めてじゃ。がたがたぶるぶる、体が恐怖で震える。
「アルタは要注意、じゃな。」
ふむ、しっかり対策を練らなければじゃ。うむ。宿に帰ったら考えよう。
と、宿のことを考え始めたその時、バタバタと白い鳥がやってきてワシの肩に乗る。
「おお、そういえばオルコットに伝達魔法使ったんじゃった。なになに……?」
鳥にオルコットからの言付けが無いか確認する。すると『特に足りないものは無いのでベア肉だけお願いします』とのオルコットからの返信を聞く。
「じゃあ手ぶらで帰ってもいいのじゃな。」
今日もいろいろあったし、早めに帰って明日に備えねば。警備の仕事然り、アルタ対策然り。
ぽてぽてとゆっくり宿屋に戻るのじゃった。




