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「生麦生米生……なんとか!」
最後は思い出せなかったが、ほとんど唱えたからいいじゃろう。テキトーに唱えた後無詠唱で回復魔法を二人に掛ける。すると二人ともホッと少し疲れが取れたような表情になった。
「わあ、体が軽くなった……!」
「心なしか体がポカポカしてきたような気もしますね……?」
「回復魔法じゃよ! 疲れていたようだったからな!」
「「疲れた元凶が何を言う……」」
今度は呆れ顔で呆れたような声でそう言う。やっぱりこの姉弟、仲が良いな。ここまで言いたいことが被ることもなかなかないじゃろうし。
「……まあ、(話が進まないので)それは置いといて。警備の件ですが、人は常に足りていない状況なので是非ともお願いしたいと思います。ただし、何があっても自己責任で。」
「うむ、それは承知の上じゃよ。」
うむうむと頷く。警備はワシから望んだことじゃからの。怪我をしても(治癒魔法で治せるが)自己責任じゃ。それは理解しているつもりじゃ。
「特にレタアさんは最低のFランク。そしてここは実力主義。実力が無い者、ランクが低い者は弱者故に強い者から……その、色々と……ご指導という名ばかりのイジメなども受けるでしょう。ギルドはあまりにも酷ければ介入しますが、基本的には傍観という対応をします。」
「だから僕心配だなー。レタアちゃんか弱そうだし、可愛いし。」
なるほどなるほど。弱肉強食の世界ということか。ならばここではある程度実力を見せつけて、安全に冒険者の仕事が出来るように立場を確立させた方がいいかの。
アルタの言葉はスルーする。
「実力主義……ならば、返り討ちにしても良いのか?」
「ぶふっ!」
「え、ええ、まあ。」
ワシの返り討ち発言にタジタジになるグリン。と、吹き出したアルタ。くくく、と笑いを堪えているようじゃ。……今のどこに笑う要素があったのじゃろうか? うーむ、分からん。
一方タジタジになったグリンは返り討ちという発想が無かったのじゃろう。グリンが思いつかなかった方法をワシが思いついたのじゃから、ワシの頭、柔らかいのじゃな!
うむうむ、若いっていいのぅ! 気分はウキウキじゃ!
「で、何か書類に署名したりしなくていいのか?」
「……あ、ああ、そうですね。でしたら……こちらの書類にサインをお願いします。そうすれば警備の仕事を頼んだという証明になりますから。」
「ほーい。」
その書類の最後に『レタア』と署名し、グリンに渡す。すると詳しい仕事内容を教えてもらう。と言ってもただ街を巡回して何かあれば対処する、くらいじゃが。
「では、明日からよろしくお願いしますね。」
「うむ! あ、一枚紙を貰ってもいいか? ちゃんとメモしないと忘れるからの!」
「どうぞ。」
「ありがとうなのじゃ!」
今聞いたことをきちんとメモして見直す。うむうむ、良さそうじゃな。
「レタアちゃん、大丈夫……?」
「む?」
その時、今までずっと静かだったアルタが心配そうな顔と声で話しかけてきた。




