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1-3

「レタアお嬢様!? いかがされましたか!?」


 ワシの専属メイドのユアが泣き声を聞いて書庫にバタバタと入ってきた。そしてワシを抱き上げてくれる。ワシはそれにしっかりしがみついて泣き噦る。


「ゆあ、ゆあ~」

「はい、ユアです。」

「うわぁぁーん!」


 どうも自分の感情をコントロールするのが難しい。これは早急にどうにかせねばならんかもしれん。


 久々に新たな魔法を考えるか。自分の感情をコントロールする魔法を。


 ……まあ、出来るかは知らないがな。


「もしかしてレタア様、あの本が落ちてきて体に当たってしまったのでしょうか?」

「うわぁぁーん!」


 実際のところは違うがそういうことにしておこう。三歳児が独学で言葉を覚えた(まあ、前世の記憶のおかげじゃが)だなんて思われたら、また天才だなんだと恐れられて孤独になってしまう。


 前世では魔法の方での天才だったが、同じ轍は踏まないようにせねば。


 今世は少し馬鹿なやつ、くらいの認識をされるようにしなければならない。ワシの今世の目標は孤独死しないことなんじゃから!


「よしよし、痛かったですね。」

「ぐす、ぐす……」


 ユアの穏やかな声に少しずつ涙も引いていった。







 ユアは泣いていたワシを抱き上げたままワシの部屋に戻ってきていた。


「ゆあ、あいがと。」


 部屋についた頃には涙は止まっていた。


「いえいえ。……そうだ、何か飲まれますか? 泣いて体の中の水分がなくなってしまったでしょう?」

「ん。あまいのがいいのにゃ!」

「かしこまりました。では少しお待ちください。」


 そう言ってソファに降ろされた。甘いものは前世の頃から大好きなのじゃ!


 一気に気分が明るくなる。物で釣られるなど子供じみているが、まあ今は子供なのだからいいじゃろう。


「ふんふんふーん、あまいの、あまいの~」


 足をぶらぶらと揺らし、ウキウキ気分を表現する。


「ココアです。」

「ここあ!」


 コトリと目の前のテーブルに置かれたココア。おお、ワシの大好物じゃ!


 ふー、ふー、と冷ましながら熱々のココアを飲むと甘さが口の中に広がる。ほわ……美味しいのぅ……


 きっと今のワシの顔はキラキラと輝いているのじゃろう。


「レタアお嬢様は本当にココアがお好きなのですね。」

もちおんなのにゃ(もちろんなのじゃ)!」


 すっかり気分も上がり、さて次は何をしようかと考えたワシは、新たな魔法を作ることにした。


「ゆあ、おえかきしたーの! かくのほしーの!」

「かしこまりました。すぐに紙とペンをお持ちします。」

「やったー!」


 ユアが持ってきてくれるまでにココアを飲み干してしまおうかの。ぐびぐびと飲み干した辺りでユアは戻ってきた。


「ここに置いておきますね。」

「あいがと! あ、ねーねー、かくのひとりがいーの。はずかしーの。」

「かしこまりました。ではまた用が出来た時にお呼びください。」

「あいがと!」


 そう言ってユアは部屋を出て行った。

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