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「よし、もう一度ギルドに戻って何か依頼が無いか見てこよう。」
とにかく今はなるだけ稼がねば。魔道具を自作する趣味も出来ないからの。
あ、ならば一度宿に戻ってオルコットにベア鍋のことを言いに行く……のはめんどくさいから魔法でどうにかしよう。
家を出て行く時ユアにしたように伝達魔法を使う。いつもの白い鳥を作り出して、音声を録音する。
「オルコット、ワシ、レタアじゃ。これは伝達魔法じゃから怯えることはないからの。……で、早速本題じゃが、今日の夕飯はベア鍋にしたいから、そのつもりで用意をお願いしたいのじゃ。ベア肉はたっぷり貰ってきたからの! で、もし他に足りない材料とかがあればこの音声の後に言付けて、もう一度白い鳥を飛ばしておくれ。」
よし、録音はオーケー。後はこの鳥を飛ばすだけ。
「行ってこい!」
バサバサ、と飛んで行った鳥を見えなくなるまでワシは眺め、さて、夕飯の心配はこれで無くなった、と満足する。
ならばギルドに向かうべし! そう決めてくるりと方向転換し、ギルドへと歩く。
「さて、良い依頼は無いかのぅ……」
ギルド内の掲示板に貼られた紙をぐるりぐるりと見回して、ちょうど良い依頼を探す。
とは言ってもワシは一番下のFランクなので、一つ上のEランクまでの依頼しか受けられんがの。ううむ、あまりがっぽり稼げそうなのは無いのぅ……。
「待てよ、毎日ビッグベアを狩ればあるいは……?」
魔物はどのランクでも常時買い取るとの情報もそこに貼られていた。それを見てそんなことをぼんやり考える。
しかしのぅ……ビッグベアってそんじょそこらにいるものなのじゃろうか。……まあ、そこんところも受付のグリンに聞けばいいか。
そう決めて受付へ向かう。しかしそこにはグリンの姿は無かった。キョロキョロと見回すが、違う受付の人しかいない。
「うーむ、どうするか……」
孤独死しないためにも、一人でも多くの人に話しかけねばじゃからな……。ならば挨拶代わりにあの人に聞いてみるか。ビッグベアはここら辺でよく獲れるのかどうか。よし、そうしよう。
ててて、と受付に駆け寄る。
「すみませーん。」
「はーい? あれ、見ない子だね?」
受付の男の人は頬杖を付きながらニッコニコの笑顔で答えてくれた。この人の纏う雰囲気は怖くはないな!
「うむ、今日冒険者登録したひよっこ新人のレタアじゃ!」
「レタアちゃんね。覚えとく。僕はアルタだよ。……ねえねえ、僕と付き合う気はない?」
……はて、この人は急に何を言っているんじゃ? 言っている意味が分からずに首を傾げる。




