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「では、ビッグベア全ての素材五万ゴルドから、解体料千ゴルドとお肉部分一万五千ゴルドを引いた額、三万四千ゴルドが……ええと、もう一度お名前を教えて頂けますか?」
「レタアじゃ。」
「ありがとうございます。その三万四千ゴルドがレタアさんに支払われます。」
「分かったのじゃ。」
この世界のお金の単位はゴルド。相場はよく分からんがの。
家を追い出されたばかりじゃし、あまり自分で買い物もしておらんからの。家にいた時は父母が買い物しているのをぼーっと見ているだけじゃったから……。
こうなると分かっていればちゃんとお金の勉強をしておくべきじゃった。
まあ、杏子屋で普通一泊すると三千五百ゴルドするらしいので……ひぃふぅみぃ……九日程泊まれるのじゃな(ワシはもっと安くしてもらっているから、実際はそれ以上泊まることが出来るがの)。
「ではこの用紙を持って受付に出してください。報酬が支払われますので!」
と、渡された紙を受け取り、この人とはひとまず暫しの別れ。しかしその前に聞いておきたいことがある。聞いても……いいかの?
「はーい。最後に一ついいか?」
「はい?どうされました?」
「名前を聞いても……いいかの?」
「……はっ! 私名乗ってませんでした!?」
「ああ。」
担当の人はなんてこったパンナコッタ、と呟いた後、わたわたと焦り出した。
「あわわわわ……なんたる失態! 本当に重ね重ね申し訳ありませんでした。私は今日からギルドの解体担当になったエンジーです!」
「エンジーじゃな。これからもよろしく頼むな!」
「はいっ!」
今日一番の笑顔で答えてくれたエンジー。とても可愛いのぅ!エンジーというよりもテンシーじゃな!
色々な意味で満足した気分じゃな。お金も得たし、エンジーも可愛かったし。
そんな風にほくほく顔で受付に紙を置く。
「これ、換金をお願いします、なのじゃ!」
「はい。……!!」
「ん?」
なんか受付の人、紙を見て驚いていたな。なんじゃなんじゃ?
「あ、あの……」
受付の人はワシを手招きして、こそっと小声でワシを呼ぶ。
「本当にレタアさんがビッグベアを狩ったんですか?」
「そうじゃが?」
「……レタアさん、何者ですか?」
小声で叫ばれた。ここでもこの質問なのか!
今日三度目の質問にまた答えないといけないのかと、はあ、と溜息をついた。




