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「ビビビビッグベアの解体が終わりましたたたた。」
先程の解体部屋に入ると、担当の人は未だにワシに怯えていた。カタカタと体を震わせている。そんなに怯えられるとこっちもどうしていいか分からんな。
ならば……
「ワシ、そんなに怖いのか……?」
しゅんと眉を下げてうるうるした目で担当の人を見てみる。弱々しさを意識してワシは怖くないぞー、と分かってもらうように。怯えられたままだと話が進まんからな!
「い、いえ! あの、ええと!」
相当焦っているのが分かる。手足をぱたぱたと忙しなく動かしているし。
「というかワシよりも怖い人なんてごまんといそうじゃが?」
見た目とか見た目とか見た目とか。
ワシは可憐な十五歳じゃから怖くないじゃろうし、対してモジャヒはなかなか厳ついと思うし、モジャヒのような冒険者も多いじゃろうし。そこんところはどうなのじゃろうか。
「えええええええと、実は私まだ今日入った新人でして……解体が上手いからと採用されたのですが……やっぱりビビリの私には向いてないんですかね……?」
「なるほど、そうじゃったのか。」
「すみません。失礼でしたよね……?」
「まあな。」
「ひぃぃぃ! すみませんすみませんすみません!」
正直に答えただけでここまで怯えられるとは……。話が進まん。少しイライラしてきたぞ。
……あ、そうじゃ。少しあの方法を試してみるのも有りではないじゃろうか?
思いついたそれを試すために担当の人の震えた手を握る。そして……
「生麦生米生卵、ぽん!」
「……へ?」
そうテキトーに唱えて、魔法が担当の人に掛かったかのように風を吹かせる。演出ってやつじゃな。
もしかしたらこれでいける気がする。
「今、少しのことでは動揺しないという魔法を掛けてあげたのじゃよ。どうじゃ? 何か変化はあるか?」
「あ……本当だ。少し落ち着いてきました!」
「じゃろう?」
「はいっ!」
ニッコニコの笑顔でそう言ってくれる。よし、これで話は進む。
ちなみに言っておくが精神に作用する魔法はこの世に存在しない。ワシにも作れんかったからの。じゃからこの人が大丈夫になったのはただの気のせいというやつなのじゃ。
「さて、なんとかベアの解体が終わったのじゃろう?」
今一度笑顔でそう聞くと、担当の人はパァーッと顔を明るくした。




