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「……ごほん。要約すると、お前さんは伝説の魔女の生まれ変わりだが孤独死しないために出来損ないを演じたら家を追い出された……で合ってるか?」
「うむ、その解釈で過不足なしじゃ。」
「……(やっぱりアホなんだな。)まあ、それが全てなら危険人物ではなさそうだな。ただ、お前さんの魔法は強力だ。くれぐれも使い方を間違えるなよ?」
「はーい。」
そこはもちろん弁えているつもりじゃ。ワシの魔法一つで、辺り一面焼け野原にも大洪水にも出来るし、使い方を間違えれば人を絶滅させることも出来てしまうからの。まあ、絶対やらないが。
ワシの作り出した魔法や魔道具で、戦争が凄惨になったという過去もあるし、一層気をつけなければじゃな。
ワシは絶対使い方を間違えたりしない。そう誓おう。この世界が平和になるような使い方を心掛けるのじゃ。
ふんす、と鼻息荒くしながら気持ちを新たにする。
「はいはい、気合い入れてるところあれだが俺も暇じゃないんだ。危険人物でないと分かったのならいい。冒険者として頑張ってくれ。」
「はーい。」
話は終わりなのじゃろう。長も大変なのじゃな。お疲れ様です。なむなむ。
さて、ともう一度自分に二つの魔法を掛け、部屋に掛けていた魔法を解く。
「あ、そうだお前さん。」
思い出したかのようにヒゲもじゃは話し始める。まだ何か言い足りなかったのじゃろうか? 首を傾げながらも聞く。
「なんじゃ?」
「レベル三は都市伝説だからな、それを平気で使うのは目立つ。良くも悪くも。それならまだレベル二と言っておいた方がまずこの世界に馴染めるだろう。」
出来損ないでも追い出される、無詠唱だと目立つ。ううん、加減が分からんが、レベル二じゃといいのか?
「ほう。で、レベル二ってどんな特徴じゃったか……」
記憶力皆無じゃな、ワシ。まあ、こればっかりは仕方がないな。
「短縮した呪文を唱えればいい。形だけでも呪文は唱えないとまた一人になるぞ。あ、ちなみに出来損ないも一人になるぞ。」
なぬ、それはいかん! ワシの目標から遠ざかってしまう!
レベル二がどれくらいかは分からんが、一人にならないためにはそう名乗るべきなのじゃな! ふむ、一つ学んだぞ!
「して、短縮した呪文と言うがどう唱えておけばいい? 記憶力には全く自信がないのじゃが……」
「初級の魔法だったら『生麦生米生卵、ぽん!』で統一されているからな、一つこれだけを覚えておけばいい。複数の魔法の呪文が同じということで難しいとされている。だがお前さんならテキトーに唱えても発動出来るだろう?」
その後ヒゲもじゃが言うには、レベル一は個々の魔法に個々の呪文が存在し、レベル二はレベル一で個々だった呪文が何個かで統合されているらしい。
「そうじゃな。ふむ、それくらいなら覚えられそうじゃな。生麦生米生卵、ぽん!」
呪文をテキトーに唱えた後、普通に無詠唱でぽっ、と指の先から小さな火を作り出す。
「こんな感じで違和感はないか?」
「ああ、いいだろう。まあ、もっと高度な魔法を使う場合はまた呪文が違うがな。それはおいおい覚えればいい。」
「ふむ、なるほど。感謝するぞ、ヒゲもじゃ!」
「ヒゲもじゃ!?」
「あ。」
やべ、心の中で呼んでいた呼び名を口に出してしまった。




